リンとダーツ
結果から言うと、リンもメチャクチャダーツが上手かった。
「リンも」という表現にしたのは、俺自身ダーツがメチャクチャ上手い、ということに気づいたからである。
そこで、リンが勝てばドリンクを注文するという流れになっていた。
種目はクリケット。先攻なら自信はある。・・・運悪く後攻になってしまったようだ。
「では、いくぞ」
リンは20のトリプルに三回当たった。最高の記録である。焦らず、20をクローズして19のトリプルに二回入れる。こちらも最適手だ。リンの番になり、19、18、17のトリプルに当てられた。俺は最後の望みをかけて、16のトリプルに二回、シングルに一回入れる。それでもリンは冷静沈着に18のトリプルに当てた後、16のトリプルに入れ、しかもダブルブルに入れるという神業をしてきた。俺の番だ。ブルに三回入れる。リンはブルに当て試合終了となった。
「なんでそんなに上手いんだよ?ダーツの機械購入して、まだ日が浅いだろう?」
「ふふふ、ケンよ。ここは曲芸師ギルドだぞ。そのギルド長の我が器用さで、負けるわけないだろう?」
「くそぉ、アイスティー、一杯お願いする」
「はい、まいどあり。100ゴールドな」
「はい」
まだ始めて三日目だ。負けて当然なのだが、ここで負けず嫌いが発動する。
「次だ次。カウントアップで勝負だ」
「良いだろう。我が負けた時はどうしたら良い?」
「さっきのドリンク代無料に変更だ」
「ふむ。良かろう」
「盛り上がっているとこ悪いんだけどさ。レモンティーお願いしても良い?」
「良いぞ、100ゴールドだ」
「じゃあさ、次の勝負ケンが勝ったら無料にして?代わりにリンが勝ったら倍払うからさ」
「ほう。燃えてきたな」
「絶対勝つ!」
「蹴散らしてくれるわ」
通常カウントアップではブルを狙うのが、セオリーだが、ケンは20のトリプルに三回当てた。引き離されるわけにいかないリンも、20のトリプルに三本入れてくる。この調子でゲームは進行していき、終盤リンにミスが出る。20のシングルに当ててしまったのだ。そのミスを咎めるかのように、20のトリプルに三本入れてケンの勝利となった。
「ええい、ドリンクは無料じゃ。ケンにはさっきのお金を返すぞ」
「やっぱりお金返さなくて良いから、パインジュース貰うことにする」
「分かった」
そう言って、奥の方へ引っ込むリン。
「やったね。信じてたよ」
「おう。ありがとう」
俺とスピアは、ハイタッチしていた。
「はあーあ、見せつけてくれるねぇ」
リンが帰って来た。
「そんなのじゃねーよ」
「そうそう」
「それにしても、流石曲芸師だ、ケン。ダーツでも器用さを発揮したな」
「ああ、うん」
「なんだ?パッとしない返事だな」
「俺は瞑想のおかげで良い成績を取れたと思っていたからさ」
「器用さでもダーツの上手さが上がるなら、ダガーを使って、器用さを鍛え直さないとな、と思ってな」
「確実に器用さはダーツに直結するぞ」
「本当か!? じゃあダガーを使って練習しなきゃ」
「そこは、ダーツで練習するのが良いと思うぞ」
「そうか。その手があったか!」
「なに名案をありがとう、リンって顔してるの。ちょっと考えれば分かるでしょ」
スピアの鋭いツッコミが入る。
「そうだな」
恥ずかしくて、頭を掻きながら答える。
ということで、もう一時間ダーツをするのだった。そこへユミがやってきた。
「こんにちはー」
「ようこそ、ユミ」
リンが出迎える。
「よう、ユミ」
「こんにちは、ユミちゃん」
俺とスピアも挨拶する。
評価よろしくお願いします。
ブックマークも忘れず、お願いします。