奈央とダーツバーにて
そして俺達はリンに別れを告げ、ホテルでログアウトした。夕食を作って食べる。今日は焼きそばだ。奈央と一緒に作ったので、簡単に作り終わった。
歯磨きした俺達は、ダーツバーに行くことにした。なかなか雰囲気の良い場所で、うっすら暗かった。ビリヤードも出来るようだ。
一人当たり、1320円で投げ放題のようだ。投げ放題のプランを選択し、自分用のダーツも買う。気に入ったダーツは1万円もした。必要経費と渋々払う。奈央は3000円のダーツを購入したようだ。
まずは二人で瞑想する。店員さんは忙しいのか、注意されずに済んだ。
十分後、まずは手慣らしにカウントアップを奈央とやっていく。パシュン、パシュン、パシュン。簡単にハットトリックが決まる。
次は奈央の番だ。カッ、カッ、パシュン。ブルに入ったのは一本だけだった。この調子で遊んで行った結果、勝者は俺だった。
「悔しいなぁ」
「次はタッグマッチでオンラインで遊んでみようぜ」
と、その前に飲み物を注文しなきゃだな。
「居酒屋じゃなくなったけど、ダーツバーでもお酒は呑めるってことで、何か注文しようぜ」
「分かった。あたしはカルーアミルクにする」
「じゃあ俺はカシスオレンジで」
タッチパネルで注文した。
「居酒屋楽しみにしてたんじゃないか?」
「うん。それなりにね。でも焼きそば作ってくれて嬉しかったよ。ダーツバーに行く前に千鳥足になっても仕方ないしさ。それに居酒屋には、いつでも行けるじゃん」
そう言って俺に配慮してくれる奈央。
「よし、タッグマッチ勝つぞ!」
「りょーかい!」
一戦目は01で楽勝だった。
注文したお酒が届く。
「カルーアミルク甘くて美味しいー」
「カシオレも旨いぞ。呑んでみるか?」
「うん、もっぱらビールしか呑んでこなかったから、新鮮で良いね」
カシオレとは、カシスオレンジの略称である。
「ビールにも色々種類があるだろう?」
「安いビールしか呑んだことない」
「それって発泡酒じゃないのか?」
「えっ?ビールと発泡酒って違うの?」
「ああ、違うぞ。確か、麦芽の使用量が50%以上のものがビールに分類されるはずだ」
「じゃあ、ビール美味しい、美味しい言ってたのは、実は発泡酒だったんだ」
ガクッっと肩を落とす奈央。
なんだか可哀想になってきた。
「じゃあこのバーで、本物のビールを頼んでみれば良いじゃないか?」
「それ名案」
「じゃあ俺もビール注文しようっと」
二人分のビールを注文した。
「さあビールが届くまで、オンラインの01で勝負だ」
「良いね。やってやろうじゃん」
次に当たった相手にも余裕で勝てた。俺達はダーツが上手い方に分類されるらしい。
そうしている間にビールが到着した。
「これが本物のビールか。どれどれ、いただきます」
「おいおい、まずは乾杯しようぜ」
「「乾杯」」
「うん、いつもより苦い」
と言いながらも、顔は笑っている奈央。
「そうか。これが本物のビールの苦さだ」
「でも発泡酒も旨いけどな」
「うん。それあたしも思った。ビールにはビールの良さが、発泡酒には発泡酒の良さがあるよね」
「このバーは発泡酒も置いてあるかな?」
奈央がタッチパネルで検索し始めた。
「あったよ。発泡酒」
「折角だし、頼んでみるか」
発泡酒を二人分注文する。
「発泡酒が届く前に、ビールは飲み干しておかないとな」
ごくごくとビールを飲み干す。
今度はクリケットでもしよう、と奈央と話している時に、発泡酒は届いた。
「乾杯しようよ」
「「乾杯」」
「うーん。発泡酒も美味しいね」
「そうだな。発泡酒には発泡酒の良さがあるな」