カウントアップと01
ハンバーガーショップが落ち着いたのは、そこから一時間も経ってからだった。
「いやぁ、ケンとスピアおかげで助かった」
曲芸師ギルドの鍵を開けながらリンはそう言った。
「ジュースか何か奢ってくれるんだろうな?」
「おお、酒でもジュースでも好きに頼んで構わんぞ」
「じゃあ、ダーツ一時間無料とピーチジュース二つ無料で頼む」
「良いだろう」
リンとの交渉を終える。
俺はスピアにダーツのやり方を教え始めた。
「つまりカウントアップは、より大きい数字にした方が勝ちなのね?」
スピアはすぐに理解してくれた。
「そうそう。始める前に瞑想をすると良いぞ。十分間くらい。それで俺の動きをトレースしてみてくれ」
「そんなこと出来るかな?」
「やってみなきゃ分からないだろう?挑戦してみようぜ」
「はー、じゃあやるだけやってみるね」
と言いながらも、リンが持ってきてくれたピーチジュースに口を付けるスピア。
その間にも俺はダーツを始めていた。不思議だ。肘を固定しただけで、こんなに良い結果をだせるなんて。ダーツを始めて二日目にして、もうほとんどブルは外さなくなっていた。瞑想してから始めれば、どんなに良い記録を出せるだろうか。ユミに報告したくなる。
十分後、スピアが瞑想をやめ、ダーツをすることになった。
果たして第一射目はどこに刺さるのか?おおっと、的を外れて壁にダーツがぶつかった!これには、スピアも涙目だ。
「最初は誰でもそんなもんだ。安心していいぞスピア」
リンが優しく声をかける。
「はい、絶対ダーツ上手くなります!」
スピアはやる気マンマンだ。
「重心は右足にかけて、肘は固定して横ブレしないようにすること」
「はい、先生!」
スピアはいつの間にか俺のことを先生と呼んでいた。
一時間経つ頃には、ユミも大分コツを掴んできた。
「さあ、ここからは有料だ。やるかい?」
とリンに急かされる。
「勿論」
「あたしもやります」
「了解した。一人500ゴールドだよ」
「「はい」」
俺達はゴールドを払うと、またダーツマシンと向き合った。少し疲れてきていたので、ジュースを飲みながら、談笑しながら、ダーツを放る。
「なあ、スピア。ヒビキとの飲み会はどうだったんだ?」
「ええ、ヒビキたら面白いのよ。お酒を呑みながら、色々な事を話してくれたわ。例えばギルドのこと。クナイ使いだけど、剣士ギルドに出入りしているんだって!他にもナンパされたときのあしらい方なんかも話してくれたなぁ」
「お酒も強くて、あたしは押さえぎみで呑んでいたんだけど、ヒビキの呑むペースが早いから、ペースに合わせて呑んだの。そしたら、私のペースについてくるなんて凄いわね、って褒めてもらっちゃった」
「そうか。ヒビキもザルなのか。周りに酒豪が結構多いな」
俺の周りは酒豪が多いのか。
会話をしながらも、ダーツで遊ぶ。今やっているのは、01というゲームだ。01とは、持ち点を減らして、ピッタリ0になったら勝ちというゲームだ。カウントアップと比べて、難易度は高くなっている。
「よし、勝った!」
ついにスピアが俺にダーツで勝利した。勿論手を抜いたからなのだが、勝ちは勝ちだ。
「ダーツも楽しいね」
初勝利を収めたスピアは、上機嫌だ。
「どうだ?今夜のダーツバーも楽しみになってきただろう?」
「うん、楽しみ!みんな強いんだろうけど、それでも楽しく遊べそうだよ」
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