お昼ごはん作り
その後も俺達はダーツを楽しんだ。リンはお酒を呑みながら、見ているだけだった。
あっという間に一時間は過ぎ去り、
「ああ楽しかった」
「ですねー。後半ケンさん強くなりすぎですよ。まるでプロじゃないですか」
「それを言ったら、ユミも凄いじゃないか?プロみたいだったぞ」
「それほどでもないです」
「じゃあ、昼頃だし、ログアウトするか」
「はい、そうしましょう」
ユミと別れ、ホテルにチェックインする。シャワーを浴びて、ログアウトする。
今日は俺の方が奈央より早かったから、適当に昼ごはんでも作ろう。
「よし、粉をまぶして揚げるだけ」
天丼を作っていた。
まあまあ美味しそうな見た目に出来上がった。タレとすだちを用意する。
「これで味変も出来るな」
天丼をリビングに運んでいた時に、奈央がやって来た。
「わあ、美味しそう!全部健二が作ったの?」
「ああ、そうだ」
天丼の見た目を褒めてもらって、俺は上機嫌だ。
「タレとすだちがあるから、好きな方を使ってな」
「分かった。ありがとう」
奈央の八重歯がキラッっと見える。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
「この海老おっきいね」
「そうだろう。一番良いのを買ってきたからな」
「うん。すだちとの相性もバッチリだ」
「タレも美味しいよ」
俺達は、語り合いながら、天丼を食べ進めていく。
「「ごちそうさまでした」」
「食器洗いはあたしがしておくね」
「頼んだ」
俺はテレビでも見ることにした。映っていたのは、高齢のボディービルダーだった。なんでも日本最高齢のボディービルダーらしい。なんとなくみたことのある顔立ちだと思ったら、アックスじゃないか!
「奈央ー!アックスがテレビに映ってるぞ」
「ホント?うわぁ、ボディービルダーの大会だ」
「アックスと思わしき人物は誰?」
「この最高齢の人だ」
「ホントだ。顔立ちがそっくり!」
「この前ボディービルダーの大会で優勝したって言ってたもんな。これLG内で話しても良いのかな」
「別に聞くくらいは良いんじゃない?個人情報の流失にはなってないんだし」
そう言って、食器洗いに戻った奈央。
俺は筋トレを始めた。すると、食器洗いを終えた奈央がやってきて、
「筋トレするのは構わないけど、さっきのボディービルダーみたいになるのは、よしてよね。筋肉の付きすぎは、ちょっと気持ち悪いからさ」
「心配しなくとも、そこまで筋トレはしないさ」
「なら、良いけど」
「そうだ。今夜ダーツバーに行かないか?」
「急にどうしたの?」
「ユミとダーツをやってさ。瞑想をしたらプロ顔負けの結果を出したんだよ。だから奈央と一緒に行ってみたいなって」
「あたしダーツとかやったことないよ?」
「じゃあ今から曲芸師ギルドへ来てくれ。ダーツが出来るから」
「分かった」
そうしてLGにログインする。待ち合わせ場所の曲芸師ギルドへ俺は急ぐ。
すると、ハンバーガーショップでてんてこ舞いになっているリンを見つけた。
「大丈夫か?手伝うぞ」
「うむ、頼む」
その声は若干弱々しかったが、病気ではないだろう。おそらく、お店が繁盛し過ぎてオーバーワークなのだろう。
三十分ほど手伝っていると、スピアが来た。
「どういう状況これ?」
「スピアも手伝ってくれんか?」
「ええ!?良いですけど」