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①
あの朝、颯斗は出会ってしまったのだ。
後に、自分の人生を大きく変えてしまう運命の相手に──。
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まだ東の空に星が瞬く、十一月上旬のとある早朝。
寒空の下、颯斗はワイシャツに黒のスラックスとカフェエプロンという軽装で、凍えながらもいつも通りカフェの開店準備を行っていた。
不意に背後から、高級そうな爽やかな香りが鼻を掠める。
いい香りに思わず振り返ると、サングラスをかけた背の高い男が、冷たい外気を纏いながらカフェへと入って行く。
まだ開店前なのに。
そう思ったが、颯斗は黙ってその後を慌てて追った。