奇妙な贈り物
5月12日、この日の夜、希美が1番に30歳の誕生日を迎え、仲間たちの祝福を受けていた。
希美と里咲は同じ商社で働いているのだが、先輩の営業マン、北見貴彦の態度に困惑していることを打ち明けた。
それは、北見の希美への突然のアプローチだという。
この日北見は、昼休憩で食堂にいた希美に、誕生日プレゼントとして、フラワーリップを渡してきたと言うのだが、持ち手の隅に‘Nozomi’と筆記体で名前が小さく刻印されており、その上、無知な希美には高価なものに見え、なんとも使い難いものをプレゼントされ、お礼は言ったが正直持ち歩くのもどうかと思い、どうしたらいいものかと午後は悩み呆けて、仕事にならなかったらしい。
T「…というより、なんで希美?そういうのって声かけられるのいつも里咲の方じゃん」
R「気に入られるようなことした記憶もないんでしょ?そもそも入りたての頃の研修で何度か会ってたくらいで最初は総務部によく顔出してくれてたけど今なんて全然だったもん。希美も久々に顔見たって言うし、ね?」
N「彼女いるって聞いてたんだけどね。なんかかなり年上らしいって話も出てて、お弁当届けに来てたとかいう噂もあったし、こっちとなんて一切接点なんてなかったのに、ほんとわからんヾ(⌒(ノ-ω-)ノ」
R「知ってる知ってる!受付の女の子達が週3で来るオバサンがいて、北見先輩の趣味疑ってたわ(笑)でもそれ、お母さんだったって話!ひとりの子がね、息子にお願いしますって言ってったとかってー!お母さんがお弁当ってちょっとヤバめでしょ(笑)」
T「ヤバめっていうかキモイ(笑)」
N「でももらっちゃったし、使わないわけにも行かないよね?明日も会社行けば会うんだし…」
R「1度本人の目の前で出してみて反応見てみたら??」
Y「…あった!これ希美がもらったのと同じじゃない?ネットで買ったのかな?専用通販サイトってなってる。これで希美の名前入れてもらったんじゃない?
…彼女への絶対喜ばれるプレゼントって書いてある…あ、鳥肌…」
スマホで調べていた優奈がよく似たフラワーリップを売る通販サイトを見つけた。希望者は名前やメッセージを刻印出来るらしい。
R「完全に彼氏ヅラじゃない!やっぱり使ってるとこ見せて反応見ないと!希美、アタシついててあげるから安心して!」
N「…うん、気が重いな」