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第6話 脱出

秋菜たち上陸部隊は必死に走っていた。

理由は勿論公安特殊作戦部隊による追撃である。

住宅などが密集している地域のため、容易に発砲する事は出来ないし、そもそも発砲すれば倒壊しそうなビルも幾つかあるためただ逃げ回る事しか出来なかった。

公安の特殊作戦部隊は射撃精度もあまり良くないし、動きがぎこちなかった。

秋菜はこの部隊が初の実戦だと考え、ゆさぶりをかける事にした。

「適当に弾をばら撒きながら後退するわよ! 絶対に柱に弾を当てないで!」

隊員たちは秋菜の指示に従い、屈んで後退しつつ89式小銃を乱射した。

乱射とは言っても、指示の通り絶対に柱には当てなかったし、何発か撃つごとに弾着に微妙な修正を加えているためフルオートにしては精度は高めだった。

その弾幕によって公安特殊作戦部隊は一度後退した。

ちなみに着弾は20発程度で一人が即死、6人が重軽傷を負った。

だが、それほど動揺した様子も無かったため秋菜は自らの予測が外れた事を知った。

しかし、公安部隊を一時的に後退させたのは紛れも無い事実だった。

「急いで! 今のうちに西岸に向かうわよ!」

秋菜は叫びながら廃墟化したビルの中へ入っていった。

そこを通り抜けて50メートル程度で西岸に到着するのだ。

隊員たちも秋菜に続いて次々とビルへと入って行く。

これで公安部隊の追撃を振り切れる。

そう思った瞬間、ビルにロケット弾が飛び込んだ。

この時使われたのは旧ソ連の対戦車ロケット・RPG-7だった。

戦車を破壊する事を考えて製造された成形炸薬弾は老朽化したビルの柱を食い破り、崩壊させた。

公安部隊はビルもろとも秋菜たちを圧死させるつもりだったのだ。

先程のぎこちない動きや命中精度がとてつもなく悪い射撃などは恐らく秋菜らをここに誘い込むための演技だったのだろう。

何故なら命中精度が低いRPG-7を柱へピンポイントで叩き込めるのなら通常射撃の精度が低いのはまずありえない事だからだ。

秋菜は自分の重大な読み違いに唇を噛みつつ、残された僅かな時間で状況の打開策を考える。

あと10秒もあれば岩の津波は自分達を飲み込み、ミンチにするだろう。

ここで、階段が見えてきた。

そして、秋菜は打開策を発見する。

現在崩れているのは1階の柱であって、ビル全ての柱が崩れている訳では無い。

そして、1階が崩れれば2階は1階に変わる。

つまり、降りられなくなる可能性は無くなるのだ。

1階崩壊の影響で近いうちにビル全体が崩壊することは間違いないだろうが、少しは時間的猶予を作る事が出来る。

そう考えた瞬間、秋菜は叫んでいた。

「急いで2階に上がって!」

隊員たちは全員揃って『了解』と叫ぶと一斉に階段を上り始めた。

秋菜たちが2階に上がった直後、津波は階段を薙ぎ払い、破壊した。

そして轟音を立てながら2階は1階へ沈み込んでいった。

音が止むと、秋菜や隊員たちは大きな溜め息をついた。

「後は西岸に行くだけよ。公安は私たちを殺したと思っているでしょうから、もう攻撃される事は無いと思うけど、一応警戒態勢をとっておいて」

秋菜はそう言うと西に向かって歩きはじめた。

もう、襲撃されることは無いだろうと安心しながら。


3分後。

秋菜たちはビルの最西端に到着していた。

1階が崩落したため瓦礫だらけで段差はあって無いような物だった。

「こちら上陸部隊。西岸に到着。脱出船はまだか?」

秋菜は無線を手に取ると非常に聞き取りにくい早口で言った。

直後に船上部隊からの返信が入る。

『あと5分あれば到着する。しかし、それよりも上を見た方がいい。ブラックホークだ。ミニガンを装備してる。急いで逃げないと蜂の巣にされるぞ』

秋菜ははっとして頭上を仰ぐと、そこにはUH-60ブラックホークと銃口を秋菜たちにむけるM-134ミニガンの姿があった。

ミニガンは毎分6000発から4000発の7.62ミリ弾を吐き出すガトリングガンで、その発射速度から痛みを感じないまま死ねる銃、『無痛銃』とよばれている。

毎分6000発と言うことは毎秒100発の弾丸の嵐。

早く逃げなければ一瞬で蜂の巣になってしまう。

秋菜は叫ぶ事も忘れてビルへと駆け出した。そこなら一応の遮蔽物が存在する。

救出部隊が来るまでそこで持ちこたえればいいと考えたのだ。

他の隊員たちもそれぞれ遮蔽物となりそうな場所へ駆け出した。

秋菜たちが隠れ終わる直前、ミニガンは弾丸の嵐を射出し始めた。

それによって隊員の一人が蜂の巣にされた。


秋菜たちは、ただ救出部隊の到着を待つのみだった。



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