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第2話 武器奪取

「3、2、1……OKです。施設は停電」

嘉弘や秋菜の隣で電圧制御装置をいじくっていた技術者風の男が小さな声で言った。

「分かった。入るぞ。トラックはすぐそこにある。偵察班を除いて全員乗車」

嘉弘は左を指差しながら言った。

そこには宅急便の大型トラックが2台とクレーン車1台が停まっている。

嘉弘の後ろにいた隊員たちは小走りで一番前に停車しているトラックに乗り込んだ。

嘉弘と秋菜はトラックの運転席と助手席に乗り込む。

トラックの真正面には、ぱっと見では外周を囲んでいる高圧電流柵と全く同じにしか見えない程巧妙に隠蔽された裏口がある。

管理者はいくらなんでもここまで隠せば分からないだろう、監視カメラなどを付ければそれのせいでむしろここに裏口があるのがばれてしまう、とでも考えたのか、ここだけ監視カメラが設置されていなかった。

この裏口が何故作られたのかは不明だが、彼らにとってはどうでも良いことだった。

偵察班が裏口の鍵を開け、扉を開くと同時にトラックが廃棄場内に滑り込んだ。

トラックは無灯火で静まり返った廃棄場を疾走する。

予定では停電から3分で武器が廃棄されている場所に到着することになっていた。

「高橋さん」

秋菜が運転中の嘉弘に話しかける。

「ん? どうした」

「いくらなんでも、おかしくないですか?」

「確かにな。ここまで来て、一度も警備を見てない。夜勤の警備員が4人いるって言う情報は一体どうなったんだ?」

実際、見つからないのがベストだと言っても、トラックの騒音で気付かれる恐れもあったし、夜勤の警備員がいることも把握していた。

しかし、これまで一人も警備員を見かけていない。

ただ単に停電から時間が経っていないからなのかもしれないが、秋菜は妙な胸騒ぎがしたのだ。

ここではない、別の場所でとんでもない事が起こっているのでは無いか、と。

「しかし、警備員に見つからないなら万々歳だ。帰りも騒がしくならなくて済みそうだしな」

嘉弘の言葉で秋菜は元の精神状態を取り戻した。

今は当てにならない直感に頭を悩ませている場合では無い、この作戦が成功しなければ終わりなんだと。

結局、見張りに気付かれる事なく搬入口から内部へと侵入し、武器の廃棄場所へと到着した。

「うわぁ、すごい……」

秋菜が驚くのも無理は無い。

そこは、まさしく『武器の墓場』と形容するに相応しい場所であったのだから。

長さ10メートル、横8メートル程の巨大な浴槽の中には89式小銃や64式小銃、M-2重機関銃やミニミ軽機関銃、01式軽対戦車誘導弾(携帯型対戦車ミサイル)、91式携帯地対空誘導弾、M-26破片手榴弾などとその弾薬が溢れんばかりに詰め込まれていた。

もしもこの場所で火災でも起きた暁には、確実に施設が吹き飛んでしまうだろう。

しかし、驚いている場合では無い。時間は限られているのだから。

「急いで武器をトラックに積み込め。早くしねぇと時間が切れちまう」

嘉弘がトラックから降りた隊員たち少し苛立ったような口調で言った。

隊員たちは了解すると一番後ろにあるクレーン車に向かうグループと2台目のトラックで待って詰め込み作業を手伝うグループ、手作業で武器をトラックに積み込むグループに別れた。

このクレーン車、実は強力な電磁石がクレーン部分に付けられており、一回で大量の武器弾薬を吊り上げる事が可能になっていた。

それ以外にクレーン部分に大きなカゴを結わえ付けて武器を掬い上げる方法もあった。

それを併用すればどうか、との意見が出たため、電磁石とカゴを併用することに決まった。


そして、1度で65丁前後もの銃を吊り上げる事が出来た。

作業時間たった7分で1300丁もの銃を吊り上げ、武器を手作業で積み込むグループは弾薬を運ぶ事しか出来なかった。


つまり、初の作戦で彼らは大成功を収めたのである。

帰りも警備に見つかる事も無く、今日は何事も無い、と思った矢先、トラックへ無線が入った。


『政府が、日米安全保障条約を破棄し、日中安全保障条約を締結した』と。



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