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第α2話 連合軍

ロシア連邦の首都であるモスクワのシンボルとも言える赤の広場。

その地下120メートル地点には、旧ソ連時代に作られ、現在でもその存在を知るものはほぼいないと言われる会議場が存在する。

その会議室には数十年ぶりに明かりが点されていた。

会議室にいるのはロシア連邦、アメリカ合衆国など併せて37ヶ国の軍事的重要人物たちである。

彼らがここにいる訳は言うまでも無い。

全世界の覇権を握るために動きはじめた中華人民共和国への対応策協議である。

「まさか、中国が『あれ』を完成させていたとは……」

「そもそも、『あれ』は中国の技術レベルで出来る代物では無い筈では無かったのか?」

「『あれ』が完成したとなると、もはや我々も事態を静観し続ける訳にはいきませんな」

「確かに。『あれ』を中国のような国家が持てば、地球は終わりだ」

議題となっているのは中国が開発した新兵器『電磁波放出式弾道ミサイル迎撃兵器』についてである。

『電磁波放出式弾道ミサイル迎撃兵器』とは、弾道ミサイルが宇宙空間へ到達する直前に静止衛星から強力な電磁波を放出する事によって弾道ミサイルの内蔵コンピュータを破壊し、大気圏への再突入を不可能にする兵器である。

その迎撃率はこれまでのMD(ミサイル防衛システム)を遥かに上回る85パーセントと考えられている。

中国がこれまでに打ち上げた気象衛星などおよそ70個にこの電磁波放出システムが搭載されており、現在、北京、上海、香港などの主要都市が存在する中国東部への弾道ミサイル着弾の可能性は2パーセント以下。

すなわち、近未来的にこれまで存在していた『核抑止力』が中国に対してのみ通用しなくなってしまう可能性が濃厚になってきたのだ。

中国はアメリカなどに弾道ミサイルを撃たれてもこのシステムがある限り主要地域へのミサイル着弾は回避できるが、アメリカなどの世界各国は通常のMD、すなわちミサイルによる迎撃手段しか持たないため、迎撃率は格段に落ちる。

中国への核抑止力が消滅してしまうのだ。

つまり、最悪の場合アメリカさえもが中国の言いなりにならざるを得ない状況に追い込まれるのだ。

その後に待っているのはソビエト連邦すら為し得なかった全世界社会主義革命の悪夢。

そうなった地球は、これまで培われてきた世界の文化、歴史、思想のほぼ全てが否定され、独裁者による専制政治が行われ、日常的な虐殺が横行する『地上の楽園』へと変貌する。

マルクスは共産主義を『究極の民主主義』だと説いたが、実際は酷くいびつで矛盾した『民主主義もどきの絶対君主制政治』だった。

このような政治では人々に幸福を与える事は出来ない。

与えられるのは苦しみと絶望のみ。

確かに、民主主義・資本主義は格差を産む。

しかし、本当に格差が全くない世界が存在しているとすれば、それは完全に静止し、人々の動きが無い、無機質で死んだ世界のみだろう。

社会主義は一見して格差が全くないように見えるが、実際は『普通(資本主義社会)なら収入が大きい人間から本来支払われるべき給料を取り上げて無理矢理格差を調整している』だけだ。

勿論、支配階級は特例で世界最高レベルの贅沢を味わう事が出来る。


これ以上格差のある世界は存在しない。


朝鮮戦争、ベトナム戦争はソビエト支配階級がさらなる贅を求めたせいで起こった戦争だと言っても過言では無かった。


中国にあのような兵器を持たせれば、それの二の舞となってしまう。


矛先はまず日本、次にアメリカ、その次はEU、最後は親に近い存在であるロシアに向かう。

その矛はすでに日本を貫いている。




アメリカにとって、これは重大な危機であると同時にチャンスでもあった。


この頃アメリカから遠ざかっていたEUと関係を修復し、天敵ロシアと手を組んで世界全体の危機への対処を行う。

かつては最大にして最強の敵だった日本。


今では……いや、あの時までは掛け替えのない盟邦だった。


あの時、無理矢理にでも政権交代を妨害すべきだっただろうか?


違う。

いくら気に入らない政党であっても、民主主義だ。

民主主義ならば文句を言うことなど出来ない。

しかし、今救ってやらなければ、共産主義に染色され、二度と隣で手を繋ぐ事は無くなるだろう。


それに、今回は世界全体の危機である。

その対処の方便に『日本の奪回』を入れても罰は当たらない筈だ。




各国は中国の愚行を止めるためにここに集まった訳だが、足並みが揃っているとは言い難かった。

武力での制裁を主張するロシアに対して、アメリカは限定的武力行使を主張し、EUは交渉での解決を主張する。

中国への経済的依存度が最も高く、出来る限り国交断絶は避けたいEUによる平和的交渉の主張に対してロシアは全国民的に反中で、中国への依存度が低いため武力行使による中国の解体を求め、中国への経済的依存度が決して低いとは言えないものの中国にあのような兵器を持たせる事に重大な危機感を持っているアメリカは日本を解放し、特殊部隊の投入による『電磁波放出式弾道ミサイル迎撃システム』制御装置の破壊を主張した。


議論は20時間以上平行線を辿り、最終的に出された結論は



『6ヶ月以内の中国共産党解体と日本解放』



だった。

短期決戦ならば経済的影響は低いとの判断からで、6ヶ月を越える場合EUは連合軍を脱退すると言う条項が盛り込まれた。



作戦名は『自由と正義作戦』


作戦発動日 8月27日。


動員戦力 140万人。


かくして、ベトナム戦争以来の巨大作戦は論議の末に承認された。





更新遅れて申し訳ございません。風邪をひいたせいでこちらの執筆時間があまり取れませんでした。それと、今回の話は幾つかのエピソードを無理矢理ねじ込んでいるのでもしかしたら変な部分があるかもしれません。もしもそんな部分を見つけたら連絡をお願いします。すぐに修正しますので。誤字・脱字の指摘や評価・感想もお待ちしております。

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