第3話 ロシア参戦
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「撃て!」
既にもう何回と繰り返した命令を祐樹は下した。
これまでに中国軍と遭遇すること16回。
その殆どが5人編成の偵察分隊だったが、最初の遭遇の際、通信部隊によって自分達の部隊の存在と位置が連絡されてしまうと言う大失態を犯してしまったのだ。
そのせいで、行くところ行くところに中国軍の部隊が待ち伏せている。
その上、今回の敵は小隊規模。
少し前までは数でこちらが勝っていたため容易に勝利出来たが、数の優位が存在しない今回は正規軍と非正規武装組織の練度の差が大きく出る事になった。
こちらの弾は全く当たらず、中国軍の弾は至近弾や命中弾を幾つも出している。
その上、恐らくこの部隊は時間稼ぎに過ぎない。
ほぼ確実に、中国軍は大隊規模で自分達を包囲している。
現在は攻撃の準備中だろう。
もしも予想が正しければ、祐樹たちが生還出来る可能性は万に一つも無い。
生還が不可能だとするならば、せめて出来る限り中国の兵士を道連れにするだけだ。
祐樹は自分の身の不幸を嘆きながらも、いつもより冷静に指示を下していた。
何故だか、自分が死ぬ予感がしないのだ。
そして、その予感は的中する。
「本部から緊急入電! ……全部隊は集結して伏せろ、です」
一体何故?
そう思う前に祐樹の口は命令の言葉を発していた。
「総員集結! 伏せろ!」
命令の数瞬後には何だか分からないが、圧倒的な死が接近してくる。
隊員たちは祐樹の近くに集結し、全員が地に伏せる。
3秒後、天地を揺るがす轟音と震動がここ一帯を包み込んだ。
祐樹が顔を上げると、そこには『何も無かった』。
中国軍の兵士は勿論、ガードレールや街路樹さえも。
あったのは、ただ焔だけ。
死の焔が、辺り一帯を蹂躙している。
「本部から入電。『ロシア空軍による近接航空支援が開始された。現在救出ヘリをそちらに向かわせている、
その場で待機せよ』以上です」
長い沈黙の後、
「……ロシアが、参戦した?」
祐樹はゆっくりと、そう呟いた。
1時間前。
『救国連合』本部は大騒ぎになっていた。
『ロシア大統領が中国への宣戦布告に関する書類に署名した』
そのような情報が『救国連合』本部へと伝えられたのだ。
「これは大変な事になったぞ……」
そう。
ロシアが宣戦したとなれば、中国はまず後顧の憂いを絶とうとするだろう。
すなわち、『救国連合』に対する全力攻撃。
「アメリカだ! アメリカの様子はどうなっている!」
1人の理事が『救国連合』情報本部を苛立った様子で歩きながら尋ねた。
「国防総省の動きは慌ただしくなっています。未確認情報ですが、海兵や空挺が出撃準備を開始したとの情報もあります。また、インド陸軍がベトナムを経由して中国へ進軍を開始したとの報告も。……最新情報です。ASEAN(東南アジア諸国連合)が中国への軍派遣を決定しました」
明らかにおかしい。
これは、確実に諸国間で密約が交わされている。
理事がそう考えた瞬間、その裏付けとなる新情報が舞い込んで来た。
「更に新情報です。EU(ヨーロッパ連合)が全会一致で中国への非難決議と軍派遣を可決しました。また、モスクワからの情報によると、一連の動きは『正義と自由作戦』と言う名が付いた国際共同軍事作戦の始動段階のようです。ロシアの動きに呼応して旧ソビエト連邦諸国が中国への宣戦準備を開始した模様。全く動きが無いのは中東方面と南米、南アフリカのみです」
「ぬぅ……」
かえってまずい事になった。
中国はこの作戦が発動される前に『救国連合』を叩き潰そうとする筈だ。
実際、全世界が相手になれば中国は確実に負ける。
しかし、ベトナム戦争を遥かに上回る損害を相手に与えるだろう。
中国にとって最も回避したいシナリオはチベット族などの独立問題を抱える民族がゲリラとして国内を跳梁し、破壊活動が行われることだ。
『ゲリラになっても意味が無い』
そう思わせるためには、既存のゲリラ勢力を叩きのめしてみせしめにすればいい。
恐らく、中国軍は既に『救国連合』本部の位置を特定している筈だ。
中国軍は2日以内に本部へとなだれ込んでくる可能性が高い。
『救国連合』始まって以来初めての防衛戦。
不安を隠しきれない理事は、情報室を出て会議室へと向かった。
更新が遅れて申し訳ございません。このところ用事続きで、その上別連載まで始まってしまい、こちらの執筆時間がなかなか取れませんでした。誤字・脱字や文法的におかしい表現の指摘、評価・感想お待ちしております。