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第13話 横須賀

翌日午前5時。

秋菜は横須賀港にいた。

既に中国の上陸艦隊は横須賀から南に50キロの地点まで接近し、現在は九十九里上陸部隊との時間調整のためか、一時的に停止している。

爆弾などの設置は完全に終了している。

あとは上陸を待つのみだった。

東には明々と輝く太陽が水平線から顔を出し始め、とてもこの一日が地獄となることを暗示しているようには思えなかった。

ちなみに、秋菜たちの出発前に『救国連合』で大きな動きがあった。

ついに、ロシア連邦政府から支援の確約を得たのである。

支援内容は戦闘機、攻撃機による近接航空支援とC4爆薬の援助だった。

その連絡文書には延々と中国への悪口や誹謗中傷が綴られており、『救国連合』内部でも拒否したほうがいいのでは、と言う意見が出た程だ。

ただ、近接航空支援については直接的な中国軍への攻撃となるため政府内部でも意見が割れており確約は出来ない、とも書かれていた。

しかし、これまでは自衛隊の物や密輸品を細々と使っていたためえC4の支援は大幅な戦力アップへと繋がる。

そして、ロシアが支援すればアメリカも必然的に支援する事になり、そうなれば次はEU(ヨーロッパ連合)も支援に乗り出すだろう。

そうなれば中国は終わりだ。

なのだが……そう上手くいくかどうかはかなり微妙だ。

現在のロシアは反中親日の政府だが、アメリカは親中政権のためどうなるか微妙だった。

どちらにせよロシアの支援は大きい。

残念ながら今回の作戦には間に合わなかったが、これから待ち伏せ攻撃が楽になる事は間違いないだろう。


それから4時間が経過した。

時刻は午前9時。

中国軍は横須賀港から15キロメートルの地点まで迫っていた。

エスコートするのは海上保安庁の巡視船『しきしま』。

世界最大級の巡視船であり補給無しで地球を半周出来るとも言われる長大な航続距離を持つ船である。

しかし、その船のメインマストに掲げられていたのは日章旗(日の丸)では無く中国国旗である五星紅旗だった。

つまり、日本の旧名を冠した船は、倒すべき敵へと変貌していたのである。

この時間になると『救国連合』部隊も退避を開始する。

残るのは狙撃部隊と爆破部隊、そしてそれらの護衛部隊と脱出用輸送ヘリコプターだけだった。

秋菜は爆破部隊の隊長を務めることになっている。

爆破のタイミングは中国軍の半数が上陸を完了した時。

全く隊形を組めていないと言う絶好の好機を逃さずに爆破出来るかがカギとなる。

あまり関係ないが、航空支援としてラジコン操作型のセスナに爆薬を満載したものを5機用意してある。

戦法は勿論特攻、しかし乗組員がいないので人的被害は出ないと言うとても合理的なシステムだった。

突っ込めば満載されたTNT爆薬が炸裂し燃料庫の航空燃料に引火、しばらく墜落地点一帯は炎に包まれる……予定だが直前に思いつきで作った武装のためあまり効果は期待出来ない。

次々と『救国連合』の部隊は撤退して行き、予定の部隊数になった頃には既に中国軍の輸送艦の先頭が接岸作業に入っていた。

そのすぐ近くでは『平和市民団体』の構成員が中国国旗を振りながら『お出迎え』を行っていた。

それを横目に秋菜たちは近くのマンションへと入っていった。

前情報によると、中国は日本からの反撃など全く予想しておらず、自走砲や戦車の弾は一両あたり15発前後、歩兵用自動小銃の30発入り弾倉マガジンも一人あたり2つから3つで、兵士もとてつもなく油断しているらしい。警戒していればマンションなど上陸前の偵察で調べられるだろうが、上陸開始まであとほんの少しだし、すぐに撤退するので問題は無いとされた。


ついに中国軍は日本に上陸を開始した。

最初に輸送艦から出て来たのは大量の歩兵で、その後ろから戦車や自走砲が続く。

まさに見栄え重視の隊列だった。

そして、見栄え重視の隊列は攻撃に対して脆弱だ。

この時点で秋菜は作戦成功を確信していた。

重要なのは、ここから逃げ延びることが出来るかどうかだけであった。


30分以上かけて上陸活動は進んで行く。

そして、約半数が上陸を終えた頃、秋菜は手で攻撃開始の指示を出した。

それに頷き、スイッチを握る隊員の親指がボタンに触れ、呆気なくボタンは押し込まれた。




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