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第12話 中国軍上陸前夜2

秋菜が会議場に到着した時、すでに舌戦の幕は開かれていた。

内容は勿論、中国軍上陸への対応である。

理事たちの統一見解として、『上陸時に地雷及び爆薬による総攻撃を行う』と言うのは既に決定していた。

中国軍は千葉県九十九里浜及び神奈川県横須賀市への上陸を行うと考えられたため、横須賀には遠隔起爆式の路肩爆弾や高圧電線への小型爆弾設置、そしてクレイモア対人指向性地雷の設置、九十九里浜では砂浜にありったけのガソリンや重油をばらまき発火装置を設置、他にも対戦車地雷やクレイモアの設置が行われる事になっていた。

横須賀の場合本日中に住民全員の移動が決まっている(中国軍による虐殺が起こった場合国民からのバッシングや反乱を誘発すると政府が危惧したため)ため住民への被害が出る可能性は低い。

九十九里浜もそもそも人口が少ない上に移動の指示も出ているため問題無い。

ただ、問題があるとすれば、中国軍にこれが発動する前に仕掛けがあると気づかれれば計画は暗礁に乗り上げると言うことだ。

そして、怒り狂った中国軍は大量虐殺に走るだろう。

しかし、敵の正体がはっきりしていれば無駄な行為に手を染める可能性は低い。

要はこの攻撃を仕掛けたのが日本国内のどこかに潜む反中組織であり、基本的に民間人とは関係ないことを知らせればいい。

中国も無駄な大量虐殺をして日本国民の怒りを買って反中組織へ合流されるのは非常に困る筈だ。

つまり、ある意味で中国と『救国連合』の利害は一致している。

『救国連合』としては国民を殺して欲しくは無く、中国としても無駄な虐殺をせずとも『敵』の正体が判明する。

中国としてはそれを叩き潰すだけで良く、『救国連合』としては自分たち以外の人間に傷はつかない。

勿論、それに乗ってくる可能性はこれまでの中国のやり方から見てかなり低い。

都合よく虐殺を行う大義名分とされてしまう可能性は非常に高いだろう。

しかし、方法はそれしか無かった。

本国に300万の兵を置く中国軍と、構成員総数が3万人の『救国連合』。

そもそも勝てる可能性は皆無なのだ。

勝てる可能性があるとすれば、それは米露の徹底的な支援だ。

既に中国の軍事力はアメリカの攻撃を凌げるレベルまで達している。

陸戦は圧勝、海軍も時間稼ぎは出来、旧式機ばかりだが大量の戦闘機を持つ空軍も場合によっては勝利するだろう。

アメリカ単体では中国に勝つことは叶わない。

しかし、かつてアメリカにとって最大級の脅威であったロシアの力を借りる事が出来れば中国共産党は破滅する。


最初から理事たちは『救国連合』単体での日本正常化など不可能だと知っていた。

狂った国家を元に戻すには外的要因が必要だ。

内部から戻せるのなら『救国連合』は武器など持たない。

持たずとも問題無い。

しかし、すでに日本は狂っている。

政府が中国のシンパとなった現在では言うまでもない事だったが。

理事たちには『保身』などと言う考えは全く無かった。

今、この時に行動を起こさなければ日本は死体が溢れかえり、地面は血染めになる。

そのような事にならないように、我が身を犠牲にしてでも食い止めなければならない。

日本と言う国家のためだけでは無い。

自らの故郷、血族、友人、恋人、子供……それらを守るためにも、絶対にここでの失敗は許されない。

この作戦がもしも間違えていたのならば、もはや日本になすすべは無い。

何故なら、日本国内に中国の侵略を許さない、そう思う組織が消滅するからだ。

この作戦はとてつもなくリスクが高い。

ほんの少しの油断で全てを失う。

しかし、成功すれば中国軍に与える精神的ダメージは計り知れない。


だが、問題はそこでは無い。

中国には先程説明したように膨大な予備軍が存在する。

作戦が成功し、その場にいる兵士を怯えさせても、人間を変えればいいだけの事。

無限の体力を持つ敵と争う事に等しい。

すなわち、彼らが狙うのは必殺の一撃だ。

『救国連合』は絶対に長期戦を戦う事は出来ない。

ならば。

短期決戦で決着を付けるしかない。

しかし、これも不可能だ。

『救国連合』には中国に攻め入れる船など無いし、上陸したところで圧倒的物量で押し潰される。

だからこそ、米露の支援を望んだ。

元は武器の融通をしてもらうだけの予定だったが、助けを貰わなければ確実に全滅する。

米露どちらかの支援があれば、最低でも日本を占領される可能性は低くなる。


結果から言うと、理事たちの考えは纏まらなかった。

しかし、それは後の事であって地雷攻撃などは確定した。

あとはただ時間を待ち、作戦を発動するだけだった。




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