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ジャンプ!

「――直射日光あっち~、ねぇ泰造さん、どうしてウチの正装はスーツなんですか、私服でよくないですか、ねーたいぞーさーん」

「いやねぇ、伝統っていうのかなぁ、日時計くんは文句言わなかったけどなぁ」

「あいつは何着たらいいかわかんないからスーツ着てんすよ、あっしはファッションセンスがあるから、ってか女の子だからおしゃれしたいんす、どぅーゆーあんだすたん?」

「ダメダメ、もういい年なんだから、駄々こねちゃだめ」

「かぁーーーっ、そんなお堅い商売してないくせにぃ」

「あ、日時計くんきたよ」


 事務所のそばの駐車場に置かれたボロの中古車のそばで私と泰造さんは現役の探偵を待っていた。この車はボロボロとはいえ唯一の足である。これをどうにか動かして仕事に使っている。ウチの事務所に金はない。


「……よぉ、待たせたか」

「ちょー待った、すでに汗だくです、メイクが崩れそうです上司」

「うるさいぞ夜桜、そんなことより火をくれ」

「はいよ」


 たばこ型麻薬「ダスク」は日時計のお気に入りで、脳内神経の強度が増す効果がある。仕事でもの凄く脳に負担がかかることがあるから、日頃からこんな風に頭を鍛えているわけだ。ちなみに私は脳トレと言って流行語大賞を狙っているが、なかなか流行らない。


「じゃ、僕はこれで」

「泰造さん、出迎えありがとうございます」

「いや、なんの」


 ――日時計の荒っぽい運転に揺られながら、携帯でぷよぷよをしながら会話した。


「……今日はパワー系って話だったな」

「そだよー」

「星の見つけ方は」

「あんねぇ、耳に赤いイヤリングつけてますねん、ピアスちゃいまっせ」

「着脱可能なのか、だったらちょっと探すのに手間取るな」

「やぁ、それはないない、捕縛して拷問して本拠地を吐かす、でしょ」

「お前がやれよ」

「なんでだっ!」

「こないだお前が下っ端を脅してるのを見てな、思ったんだ。たぶんお前の方が向いてる」

「えー、乙女にそんなこと言わないでよぉ拓海ぃ」

「呼び捨てにすな」


 裏サイトで調べたところによると、どうも国際超能力研究所というのは「サイキック・ストレンジャーズ」の日本支部の一つになっているようで、人気チェーン店みたいに全国展開しているらしい。PSPの入手先、というか輸入経路を特定するのは骨が折れるから麻取の連中に任せるとして、私たちは武闘派なので直で行ってドッカンです。


 中心街の地下駐車場に車を止めて、そこから街をひたすら練り歩いた。一人見つかればいいと甘く見積もっていたら、意外にいない。結局昼過ぎまでかかった。


「――いねぇな」

「あ、いた」

「どこ」

「あそこ、あ、今目合った」

「馬鹿」

「あ、逃げた」

「追うぞ!」

「うぃっす」


 路地裏へと逃げていった赤いイヤリングの男はもの凄い力で地面を蹴って高速で進んでいるみたいで、足跡がコンクリートの地面にがっつり刻まれていて、逆に足跡をたどりやすいという愚行を働いていた。まぁ追跡は私の十八番なのであまり関係ない話だけど。


「おい日時計」

「さんを付けろ」

「このままでは追いつかない、飛ぶのだ日時計、一回でいいぞー、相手そんな早くねーし」

「お前に走るペース合わせてるから追いつかねーの。……乗れ」

「キャーかっこいー」

「棒読みは勘弁」


 日時計におんぶされて私は飛んだ。めっさ凄い跳躍力かと思いきや重力オフっていうインチキジャンプである。方向ナビゲーションは私が務めた。やはり優秀な私、的確な指示、着地と同時に捕獲、すなわち赤いイヤリングの男に直撃で着地。Foo!


「――ぐはっ!」

「おいてめぇ、分かってんだろ、全部吐け」

「……るせぇ、誰が言うかよ」

「おい、夜桜、やれ」

「いえっさー」


 怖―い脅し文句を耳から吹き込み、爪を三枚ほど痛い剥がし方でぺろりんちょしたところで洗いざらい全部吐いてくれた。


「うぅっ、西新宿五丁目の、……地下にあるバーだ」

「店名は」

「す、ストラディバリウス」

「バイオリンかよっ」

「調べてくれ」

「――ないっす先輩。検索にかからなーい」

「おい、嘘ついてんのか」

「ちがう! ヤバい店だからって看板出してねぇんだ」

「どの辺か教えてちょ」


 そうして教わった場所に行くと、当たり前だけど開店していなかった。ので、夕食をコンビニで買い、車の中で待ち伏せって言うか張り込みって言うか、待機モードに我々入ってしまいましたとさ。


 なんで飛ぶねん、しかも重力オフって何事? とお思いの方、大丈夫、安心してください。いまからあんパンを食べつつご説明いたしますわよ。


 まず私の横で職務放棄してぐっすり寝ているこいつが日時計拓海と言いまして、えー、これでもプロの探偵をしています。といってもウチの事務所は普通の探偵業のほかに、PSっていう薬で人体改造してはるクレイジーな犯罪集団をとっ捕まえて警察に突き出すっていう役目がありまして。え、読みづらい? 改行!


 えー、それでねぇ、お薬はいろんな種類ございまして、危なっかしいやつから、比較的研究が進んでいて安全なやつまでピンからキリですけども、どれも脳味噌の中のシックスセンスに関わるような部分に刺激を与えます。まー薬物ですから向き不向きあります、お酒と一緒です、飲めないやつは飲めない。


 おじーちゃん、おばーちゃんは効き目が悪いのか、あまり反応がないけど、若者はガツンと効く。適合できない体質の子が無理すると脳がぶっ壊れて廃人になるんだけど、みんな若いからね、お構いなしに飲んじゃうし注射しちゃうし。今回はもっと悪質な件で、水で薄めたやつをこっそり飲ませて覚醒するか様子見ってパターン。


 長ったらしくてごめん、要するに、超能力とか、異能力とかに目覚めた「覚醒者」が寄り集まったのがPSサイキック・ストレンジャーズで、不思議な力をゲットした若者っていうのは案の定犯罪やります! これホントだから、みんなやんちゃだし。


 そういう人たちの存在に気づいた私は裏サイトでいろいろ調べてるうちに段々そういう世界に興味が移ってしまって、気づいたら噂の探偵事務所に就職していたってわけ。噂っていうのはPSの犯罪者を懲らしめる民間企業あるんですって話で、つまりそゆこと。


 日時計は自分の体にかかる引力をコントロールできますの、えぇ、さっきのは引力の中の一つである重力を小さくしてぴょんと飛んだんです、そういう奴ですこいつは。性格としては非常に堅物で、年齢は二十八ですけど見た目は三十五くらいの無精ひげのアホです。たぶんIQは3ぐらいのもんです。


「おい、心の声漏れてるぞ」

「あらま、漏れてたか。すまんなミスタースリー」

「誰がミスタースリーだ、殴るぞ?」

「すいやせーん」


 私の能力ですが、サブ的な補助能力ばっかりです。おいおい詳しく紹介しますけど、そろそろ夜です、悪い子がゾロゾロと店の中はいっていってるので、そろそろ突入します。


 


 


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