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魔剣戦記 序  作者: せの あすか
13/17

9月5日 トラギア王国

トラギア王国。


千年王国と呼ばれ、アストニア大陸で最も古い歴史を持つこの国は、大陸東南部地域と東北部地域を結ぶ交通の要衝に位置しており、古くから交易で栄えてきた。

山がちな地形ではあるが農業も盛んで、特にトラギア産の果物は周辺全域に運ばれ、高値で取引される。

また伝統的に強力な騎士団を擁しており、驚くべきことに建国から今に至るまでの途方もなく長い間、他国の侵略を許すことは一度もなかったという。



一時期はアストニア大陸の東側大部分をその勢力下に置いたトラギアだが、400年ほど前・・・戦の時代(テンポレベッリ)と呼ばれる混乱時代に、現在のマリーアス・オルドナ・ソラス地域の豪族や亜人集落が相次いで離反独立。その後も領土を減らし続けた。


現在に至っては、支配地域はトラギア城下町とその周辺の農地や山地を残すのみとなっているが・・・

その歴史の古さと軍の精強さ、要衝に位置する利によって、また文化的な意味合いにおいても、トラギアは今なお周辺地域に少なからぬ影響力を持ち続けている。



そのひとつが「トラギア王歴」だ。その名の通りトラギア建国の年を0年とする暦であり、正式に整備されたのは建国から100年ほど過ぎてからと言われている。

その後周辺地域にも広まり、今ではアストニア大陸全土で広く使われていた。


他にも、数年に一度周辺国の王が集まる諸国王会議においては、伝統的にトラギア王が議長となっていたし、旧時代にトラギア領であった地域の国の中には、今でも形式的にではあるがトラギア王家に対して臣下の礼を取る王家もある。



そして今年はトラギア王歴999年。以前から千年王国(ミレニウム)と呼ばれてきたトラギア王国がついに、本当の建国1000年を迎える。

当然トラギアでは盛大な祝祭が執り行われる予定で、その準備で町全体が活気づいていた。

どこを見ても民は忙しそうに動き回り、他国からの商隊もひっきりなしに往来する。

きっともう少しすると、観光目的の他国民が押し寄せるのだろう。





トラギアの城は山の中腹に建つ、石積みの美しい城だった。

後ろには険しい岩山がそびえており、城に向かう道は1本のみ。

天然の要害に守られた城は、「不落城」「天の城」といった異名を持つ、稀代の名城として知られていた。


城の周辺は軍の施設と貴族の屋敷が放射状に並び、さらに裾野にかけて民家や市場などが広がる。






そんな街の喧騒が届くか届かないか、という場所。



トラギア城の城門前で押し問答が始まっていた。



「いや、だから言ってるだろう、オルドナの王の使者なんだって!」



ジャンはもううんざり、という顔で門番に向かって大声を出す。



「バレるウソをつくものではない。使者ならば事前に通達するのが筋だろう。

それに貴様らはどう見ても正使のいでたちではない。

もう時間の無駄だ。帰りなさい。」



「本当なんです。友好の証として、内密に献上品のみをお持ちしております。

特に同盟やその他の交渉を求めるものではありませんので、王か、家臣の方にお取次ぎをお願いできないでしょうか?」



トニも何とかしようと頑張ってはいるが、どうやらこの門番を説得するのは難しいらしい。

さっきから埒があかない。


コビはもう飽きてしまって、少し離れた場所にあるちょうど良い石に座り、様子を眺めながらあくびをしている。





その折、馬に乗った貴族らしき壮年の男が数人の従者をつれ、街のほうから城門まで登ってきた。


「ラグアスさま。おかえりなさいませ。」


門番がすぐさま開門の準備を始める。


ラグアスと呼ばれた男がジャン達に気づき、門番に尋ねる。


「どうした、何かあったか。この方々は?」


「ハハッ 城のなかを見学したいのでしょう、門を開けろと先ほどからうるさくて。

申し訳ありません、すぐに追い返しますので。」


「いや、待ってくれ!おれたちはオルドナの使者なんだ。

王に会いたい。引き合わせてもらえないか?」


ジャンがラグアスに直訴する。



「オルドナ・・・・?」


ラグアスの表情が曇る。


「オルドナがこの国に何の用だ。しかも事前に通達もなく。

同盟の話ならあり得んぞ。戦争への協力や支援もな。

冗談でもこの国でそんな話をするものではないぞ。」


厳しい表情。ジャンもトニも気おされる。

コビは立ち上がり、心配そうに見ている。



トニが一歩前に出る。


「ご心配はご(もっと)もです。

私はオルドナ近衛隊に所属しております、トニ・メイダスと申すもの。

こちらは第一特殊攻撃隊所属、ジャン・オルソン。

こちらは付き人のコビ。」


普段は見せない慇懃な態度で、ふたりを紹介する。

事前の打ち合わせで、ジャンの苗字は伏せることになっていた。

オルドナの大将軍と同じ苗字を名乗ってしまえば、どうしても目立つ。



トニの言葉遣い、立ち振る舞いは使者にふさわしいものだった。

そのせいか、ラグアスの表情が若干変わる。


少なくとも、敵対の表情ではなくなっていた。



不躾(ぶしつけ)を承知で、わが王からの贈り物を届けに参りました。

武器や荷物など全てお預け致しますので、トラギア王にお目通り願えませんでしょうか?

交渉事などは一切ございません。

千年紀のお祝いだけを述べさせていただければと存じます。」



ジャンも丁寧に頭を下げる。

コビも立ち上がってふたりに並び、頭を下げた。


ラグアスは三人をじっと見る。


「軍人か。確かに鍛えてはいるようだな。身分を証明するものは?」



トニ、ジャン共に、オルドナの紋の入ったペンダントを見せる。


ラグアスは馬上から地面に降り立ち、ペンダントを改める。



「ふむ。どうやら本物だな。して、その贈り物とは?」



「こちらです。中身は我々も知りませぬが・・・・。」


トニに促され、ジャンが包みを手渡す。


「当然改めさせてもらうが、よいな?」


「もちろんです。」


大きな荷物を受け取ったラグアスは、門番と従者に手伝わせて、包みをほどいた。

ここまで中を見ずに来たので、ジャンもトニも内心興味津々だった。




出てきたのは、鞘に入ったひと振りの両手剣。両刃でかなり長い。


黒い刀身。そして柄にはかなり大きく赤い宝石があしらわれている。



「これは・・・ドラゴニウムと、石は赤鋳石か!

なんという・・・立派な剣だ・・・」



ラグアスは感嘆の声を上げる。


門番も、従者も、トニたちも、目を丸くする。



こんな剣は、そうそうあるものではない。




「この剣、付与魔法(エンチャント)は?」


アストニアでは、武器や防具に何らかの付与魔法をかけることが多い。


最も一般的なのは単純に刀身を強くする「強化」。

刃こぼれや反り、折れを防ぐ。

他にも、氷や炎の属性を与えたり、雷の力を帯びさせたりする事もできる。


また、魔法を出現させる条件をつけることも可能だ。

例えば、刀身が触れた時にだけ雷の力を発する、等・・・。


これは「制約(ギアス)」と呼ばれ、一般的には常に力を出すよりも制約(ギアス)をかけたほうが一時に発現する魔法力を大きくすることが出来る。



魔法をかけるには、刀身や防具に宝石を組み込み、その宝石に術者が魔力を吹き込む。

刀身の材質、宝石の種類、それと術者の能力によって、吹き込める魔法力の最大値が決まる。

ドラゴニウムと、赤鋳石と呼ばれる最高位の硬度を誇る宝石であれば、相当の力を込められるはずだった。




「私共には贈物の中身が伏せられておりましたので、特になにも聞いておりません。

贈物の際には付与魔法(エンチャント)無しでお渡しするのが一般的かと存じますので、今回もそうではないかと推測しますが・・・」



トニは少し、動揺していた。予想以上に立派な品だった。


こいつは今まで見たどの剣よりも強力になり得る。



(そりゃ重いはずだよ・・・)


ジャンは内心閉口していた。


(ていうか・・・一回振ってみたかった!)


口には出せないが、心底そう思った。




「タルサ、これを持ってみてくれ。他の者は触るなよ。」


ラグアスがさっきの門番に命ずる。


賢明な判断だった。付与魔法(エンチャント)の中には、持った時にいきなり発動するものもある。


そこに悪意を込めてある場合、持った人間がいきなり死ぬこともあり得る。



もちろん、暴れだすこともあるので、試すのであればなるべく弱い者で行うべきだった。




とても賢明な判断ではあったが、当の門番はたまったものではない。


「私が・・・!ですか??こんな大きな宝石・・・・嫌です!」


「イヤか・・・残念だな。そういえばこの者たちの素性を確かめもせず追い払おうとしていたな?

それについては不問にしてやろうと思ったのだが・・・。」



ラグアスがいたずらっぽい顔をする。


ジャンとトニは顔を見合わせてニヤリとする。



「そんな・・・わかりましたよ・・・何かあったら助けてくださいよ?」


ラグアスと、ジャンとトニ、3人して頷く。




「じゃあ、持ちます。嫌だなあ・・・」


そろそろと、剣に手を伸ばす。



触れるが、特に何もない。


剣を持ち上げる。相当重そうだ。



鞘から抜く。何も起こらない。




「念のため・・・抜くぞ、よいな?」


ラグアスがジャンとトニに言う。


ジャンが頷くと、ラグアスは自分の腰の剣を抜いた。


細身の長剣。





二つの件の刃を、ちょんと合わせる。








やはり何もない。




空気がふっと緩む。


泣きそうな顔をしていた門番も、ほっとした表情。



「ふむ・・・。良いぞ、しまってくれ。疑ってすまなかったな。

何しろ悪名高きオルドナだからな・・・おっと失礼。」



「悪名に関しては自認しております。

・・・お目通り、願えますか?」


トニがいたずらっぽく笑う。


「恐らく。ただ正使の扱いにはできんぞ?短い時間で内密に会うことになる。

王は城におられるはずだから・・・午後には会えるよう段取りをしておこう。

これは預かっておいてよいか?魔法使いどもにも確認させたい。」



「もちろんです。あくまで内々に、友好の証の品だけお渡しできれば、との我が王から申しつかっております。

ご助力、ありがとうございます。ここでお待ちすればよいですか?」



「いや、それはさすがに悪い。ちょっと待ってくれ・・・」


腰袋の中をまさぐる。


「あった。これを。」


小さな羽飾り。


「持っていてくれ。私が呼ぶとこれが震える。

街を散策などしてくると良いだろう。城まで来てくれ。

ああ、謁見前にもうちょっと身なりを整えてくれよな。」



長旅でずいぶん汚ない恰好になっている事に気づき、3人は赤面しつつ頷いた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





3人はそれから、街の中を見て回る事にした。


まずは着るもの。

目立たず、それなりの見栄えがするもの。


この地方でよく着られる簡易礼服にした。



それから理髪師の所で髪を整える。

ジャンもトニも、もともと髭は薄い。

髪を整えて顔を拭くと、かなり見られるようになった。


コビはもともと髪が脳天付近にしか生えていないのだが、それも整えてもらった。



妙にさっぱりした3人は、お互いを見て笑いあった。




それから、街の色々な店を見て廻った。

露店で揚げ鶏肉を買ってほおばりながら、特産品や各国から集められた品々を見物する。


荷物が増えると困るので、欲しいものがあっても買うわけにいかないのだが・・・


それでも3人は、久しぶりに自由で危険のない時間を過ごした。




しかし日が傾く前に時間切れの合図。

ジャンの胸ポケットでさっきの羽が震えている。



「トニ、合図だ。」



「ああ、思ったより早いね・・・」



コビとトニが心底残念そうな顔をする。



「まあ、謁見を済ませたらまた見て回ろうぜ。

さすがに無視するわけにはいかないだろ。」



ジャンも残念そうに肩をすくめながら言った。




門番タルサはさっきと打って変わって、丁重に3人を迎え入れた。




とはいっても、正面ではなく脇の小門から。


岩山の中に入っていくような門だった。

タルサともう一人の女の門番に先導されて中に入る。




石積みの壁と木板を敷き詰めた床。天井は岩肌がむき出しになっている。

おそらく天然の洞窟を綺麗に整備したものだろう。


狭く複雑に曲がる石の回廊を歩く。

魔法の光が所々に配置してあり、危険は感じない。




ジャンは途中まで方向を記憶しようと頑張ってみたが、ほんの数分で方向も距離もわからなくなってしまった。

しかも一本道ではなく、いくつか分かれ道がある。


もう一度一人で同じ道を行けと言われても絶対に無理だな、とジャンは思った。


だが何となく、徐々に地下にもぐっているような感覚はあった。



10分ほど後。回廊の終わりに、重厚な木の扉が現れる。

別の門番が一人。ここで3人がかりで厳重に体を改められ、荷物の類はすべて取り上げられてしまった。


さらに、魔法力を無効化する腕輪までつけられる。なかなか厳重な警備だ。



これはオルドナの人間だからか、それとも?

トニには測りかねた。



門番が二人がかりで巨大な閂を外し、観音開きの重い木の扉を手前に開ける。






ふわりと香のような匂い。赤い絨毯。




そして、中で正装したラグアスが出迎える。





「ようこそ、トラギアのお城へ!」



芝居がかった挨拶で、3人の緊張をほぐそうとしてくれたのだが、ジャンひとりが引きつった笑いを浮かべただけだった。





すぐに後ろで門番が扉を閉める。


タルサと女門番はそのまま付いてくるようだった。




「遅くなってすまなかったな。謁見はこの先で。」





一行は赤絨毯の狭い回廊をしばらく進む。

赤絨毯になってからも、かなりの回数曲がっている。

所々に上り階段があるので、地上に戻るのかもしれない、とジャンは思った。





香の匂いが強くなる。回廊が広くなる。

10段ほどの階段を登ると、先ほどと同じ大きな木の扉が現れた。




「ここで王がお待ちだ。簡単におぬしらの事とオルドナ王の意向は伝えてある。

気さくな方だが、くれぐれも粗相のないように。」



それから、門番より簡単に作法の講釈が始まる。

古い王家だけに、こういうしきたりには厳しいのだろう。



3人は講釈を受けながら、緊張が高まるのを感じていた。




重厚な音を立てて扉が開く。


直前に手ほどきを受けた作法にのっとり、顔を下げたまま進む。

中央で膝を折り、頭をさらに下げる。


この時点では部屋に王はいない、と聞いていた。




「王の御成りです。」

門番が仰々しく宣言する。



数人の衣擦れの音。


護衛と、王?


頭を下げたままでも周囲の緊張感が伝わってくる。

全ての音が消える。





「面をあげよ。」


低くよく通る声。


ふっと周囲の緊張が解けるのを感じる。


3人は顔を上げる。




玉座に座るトラギア王。簡易式の王冠にマント。


「よくぞ参られた。ラグアスから話は聞いておる。遠いところご苦労だったな。」


柔らかい笑顔。王にふさわしい威厳は備えているが、決して尊大ではない。




ここでは主にジャンが喋ると決めていた。


「恐れ入ります。この度は貴国が建国から千年を迎えられるとのこと・・・

まことにおめでとうございます。


わがオルドナ王の命を受け、千年紀のお祝いの品をお届けに参りました。

トラギア王国と我が国の友好を確かめる一助になればと存じます。」



「ふふふ、ずいぶん堅苦しいな。そちが、オルドナの近衛の者か?」


「いえ、私は特別攻撃隊と名の付く隊で中隊を率いております。

近衛に所属しておりますのは、こちらのトニと申すものでございます。」



「ほう。どちらもなかなかの武人と見えるが。そちらの者は・・亜人・・・か?」


「はい。コボルトのコビ、と言います。訳あってこの人たちと一緒に旅をしています。」


「そうか、珍しいな。なかなか変わった組み合わせだが、面白い。

是非この国を良く見ていってくれ。

手前みそだが、なかなか良い国だからな。」



「ありがとうございます。」


コビは少し緊張がほどけた様子で、笑顔を見せた。



「手錠などつけてすまないな。・・・して、祝いの品というのは・・・もう貰っておるのか?」


トラギア王がラグアスを見る。


「こちらです。ご覧ください。」


ラグアスが、飾り箱に入れた剣を持ってきた。


「これは・・・ドラゴニウムか!!なんと立派な・・・・」


3人は頭を下げる。



「王家に伝わる宝剣にも劣らない逸品だな。

さすがにこれほどのものを見ると私も血が騒ぐ。

振ってみたくなるな。」


「恐れ入ります。」


「千年紀の祭りにこの剣を佩く、というのも良いかもしれんな。見栄えがする。」


「もったいないお言葉・・・。」


しばし剣を見つめていた王の表情がふっと緩む。



「オルドナ王のご意向は確かに承ったよ。

ただ、わかってはいるだろうが・・我が国はメルケル、マリーアス両国とは古くからの親しい友人だ。

その両国といがみ合う貴国との友好を表立って宣言するわけにはいかんからな。

戦への協力もオルドナへの物資の供給もせぬ。


逆に友好国からそのような申し出があった場合にも断わるわけにはいかんし、オルドナと親しいと思われることはこの国にとって害になり得る。

だから今回の事はひとつも表にもらすことは出来ぬ。そこだけは分かってくれよ。」



意外なほど砕けた態度だった。

もともとこういう人物なのかもしれないが、ジャンは少しうれしかった。

これはつまり、贈り物を受け取ってもらえたという事だろう。



「もちろんです。わが王からもその点に関しては幾度となく説明をされております。

他意のない、お祝いの気持ちとして受け取っていただければ。」



「うむ。本来なら王子や王女、重臣や騎士団の面々とも会わせたいのだが・・・

そんなつまらない理由で、君らが会えるのは残念ながら私だけだ。許せよ。」



「滅相もございません。陛下とお会いできて大変光栄です。ありがとうございます。」


トニが割り込んできた。ジャンが目で咎めるが、トニは全然気にしない。どうも喋りたくてしょうがなかったようだ。


「いや実は、子供らの稽古をおぬしらにつけて貰ったら面白いかもしれんと思ってな。

どうしても一国に閉じこもっておると剣に幅が出なくなるからな。

オルドナの剣技というのがどうなのか私も見てみたい。」



「それは・・・確かに。

私どもも今までオルドナから出ることがありませんでしたので、もしそんな機会があれば良い経験になるだろうと思います。」


トニが答えてからジャンを見る。



「そうですね。我々にも勉強になるし、王子様や王女様の剣技も見てみたい。

騎士団の方々ともお手合わせ願いたいです!

是非次は正使として・・・いや、逆に暇をもらって観光で来ましょうか?」



突然振られた面白い話題でジャンはずいぶん砕けた態度になってしまった。

ラグアスが苦い顔をするが、王は全く気にしていない様子で楽しそうに笑う。


現トラギア王 --ペテル5世-- は、本当に気さくな人物のようだった。






それから、ラグアスとコビ、門番達も交えて少し雑談をした。


旅路のこと、現在のオルドナの様子、周辺国の様子。

剣技や兵器の話題、祭りの準備の話。

コボルトの現在。炎の森の様子・・・。



王は3人をずいぶん気に入ったようで、王子と王女に会わせたいと、その場に呼んでくれた。


14歳になる王子、三つ下の王女。

共に利発で、剣の稽古も勉学も相当に頑張っているようだった。



もちろん剣の稽古などはつけられないので今日は挨拶だけだったが、ジャン達3人にとってはこの上なく嬉しい出来事だった。







それで謁見は終わりになった。


王族の次に護衛とラグアスが退出し、3人は門番に連れられてもと来た回廊で城下町に戻った。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



夕焼けがちょうど色を失おうとする所。赤と青が境目なく入り混じる空。



彼らはすぐに街の酒場に赴き、任務を終了した充足感を乾杯で分かち合った。


話題の中心はもちろんトラギア王とトラギアの国。





すぐにオルドナに帰るのは惜しいと3人共が思っていたのだろう。


誰が提案するでもなく自然に、明日からもしばらく、この街に留まる事が決まっていた。

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