某日 某所
腹を裂いた。内臓、血。
竜の体温は人のそれよりもずっと熱い。
闇雲に暴れる爪を避けながら、喉首を抉る。大量の血を浴びる。
獲物はひとしきり痙攣した後、大きく息を吐いて絶命する。
灰色の世界に竜の血だけが赤い。
もう居ないのか。まだ殺し足りない。
その時、ひと際大きく金色に輝く竜が崖上から現れた。
明らかに他の奴とは違う。
古竜、か。
竜の寿命は普通100年ほどだが、稀にえらく長く生きる奴がいる。
こいつらは人間と違って死ぬ間際まで成長し続けるので、体も大きく、知能も他より高いらしい。
噂にしか聞かないが、1000年生きる奴も居るとか。
こいつはどのくらいだろう。さっぱりわからない。
だが同じ生き物、喉首を搔き切れば死ぬ事に変わりは無い。
挨拶もなしに太い腕が横薙ぎに飛んでくる。後ろに飛んでかわす。
古竜はその勢いのまま回転し、長い尾で追い打ちをかけてきた。
早い。こっちは着地したばかり。かわせない。
なんとか剣で受けるが体ごとふっ飛ばされる。
「ぐはっ」
岩肌に背中をしこたま打ち付ける。
息ができない。涙で視界が滲む。
古竜は様子を見ながら近寄って来る。何かを喋っているような、抑揚のある吠え声。
仲間を殺された恨み言か?それならばこちらも同じだ。
忌まわしき記憶が蘇る。
殺したい。殺したい。
心臓が大きく波打つ。
無理矢理に息を吸う。背中の痛みは無かったことにする。
剣を構える。剣がかたりと、震えたような気がした。
そうか、おまえも奴の血を吸いたいか。
岩をも溶かす炎の塊が、古竜の口から吐き出された。





