冒険者ネクロフィリア
一人で死ぬのって、こんなに心細かったんだ。
ここは毒のダンジョンの深層。私は不治の毒を食らったマヌケな冒険者だ。そしてかっこつけでもある。
迷宮の同じ場所に留まれば致命的なことになる。深層では足手まといをつれて動くことは難しい。しかも深層での毒はどんな魔法でも薬でも治らない。
だから私は格好をつけて、パーティーの皆に、私は良いから先にいけだなんて言ってしまった。
馬鹿なことを言った。だって一人で死ぬのがこんなに怖いなんて知らなかった。
私は恐れ知らずの冒険者様のはずだったんだ。だけど今は怖くて仕方がない。
「おい…」
誰かが話しかけてきた。死神のお迎えだろうか?それでも一人で死ぬよりは良いかな?
「取引をしないか?」
死神がそう尋ねてくる。なんだろう?
「助けてくれるの…?」
死の恐怖から逃れるように、そう尋ねる。
「いや、お前は助からない」
わかっていたことだけど、改めて言われると恐怖で身体がすくむ。まぁもう毒で動けないが。
「一人で死ぬのは心細いだろう?こちらの要求を飲めば、死ぬまでそばにいて、手も握ってやる。望むなら遺言も遺体も届けてやるぞ」
確かに心細かった。この心細さを誤魔化せるのなら、今の私は悪魔とでも契約するだろう。
「要求って何?」
「お前の死体を犯させろ」
怖気が走った。あまりの気持ち悪さ、気色悪さに吐き気がしたような気がした。
…でも、それでも私は一人で死ぬ恐怖には打ち勝てなかった。
そして私は悪魔と契約をした。死の間際の恐怖を少しだけ誤魔化せた。