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えれなの  作者: のじゃー
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出百合

 その日、大地が悲鳴をあげた。

 数刻前まで存在していた樹齢千年を越える美しい大樹林が跡形もなく消し飛ばされたのだ。

 地面が巨大なクレーター状に抉れて、雲は消し飛び海が真っ二つに割れて、辺りはまるで天変地異が起こったかのような惨憺たる有り様だ。

 そのクレーターの中央で2人の幼女が背中から生えた翼をバサバサはためかせて空中で向かい合っている。


 一人は怒りのまま眉をキッと吊り上げる麗しい黒髪金瞳の幼女。

 前髪がピッチリ揃った黒髪ロングヘアの奥では、長い睫毛に装飾された黄金の瞳がギラギラと輝いている。

 頭から生えた立派な巻き角と雄々しい尻尾が彼女が龍人だと雄弁に語っている。


 一人は愉快そうに口の端を吊り上げて笑う妖艶な白髪赤瞳の幼女。

 一切の色素が抜け落ちたかのような白い髪と肌が、妖しく光る深紅の瞳をより一層引き立てている。

 やや細めの頭角と尻尾がどこか機能美を追求した美しさを醸し出している。


 いずれの幼女も優劣付け難い人間離れした美しさ。

 ちょっとアレな趣味の者なら一目見ただけでイチコロで魅了されかねない、そんな傾国の美幼女達。


 そんな絶世の美姫の内の一人。

 黒髪幼女が背中から生えた翼をばたつかせた。

 尻部の少し上から生えた黒い尻尾を不機嫌そうにぶんぶん左右に振り回しながら大声で叫ぶ。


「だーかーらー悪いのは全部おぬしじゃ!わしのとっておきのプリンを勝手に食べたシロネが悪いんじゃろうが!!少しは反省せんか!!」


 対する白髪幼女は愉しげに白い尻尾をフリフリさせて、目を細めて口元に手をやり上品にくすくすと笑う。


「くふふ、そなたの物はわらわの物、わらわの物はわらわの物よ。そんな事もわからんのかえ? クロネはオツムの具合が残念よのぅ」


 白髪幼女ーーシロネのあくまで挑発するような物言いに黒髪幼女ーークロネがその場で悔しがる。


「ぐぬぅ、どうしても悪いと認める気はないんじゃな?」

「愚問も愚問。わらわに過ちなどありはせぬ。わらわの一挙手一投足全てが覇道で王道で正義で真理と心得ぬか」

「プリンを食っただけで何を偉そうに覇道じゃ!このアンポンタン!性悪年増ババア!!」

「……なっ!?」


 "ババア"という単語が出てきた瞬間ピクリと頬を引き攣らせるシロネ。

 

「わ、わらわはまだ1200歳!まだまだ若くピチピチであると知れ!」

「ふん、1200歳で若いなど片腹痛いのじゃ!800歳のわしからすればババアもいいところじゃ!」

「……」


 シロネはぶるぶる肩を震わせる。

 怒っている。明らかに怒っている。

 圧倒的な密度の龍の魔力が周囲に漏れ出て大地を揺るがす。

 地雷を踏んだことに気付いたクロネは、しかし後戻りは出来ないので怯えながらも気丈に睨み付けていると、シロネが低い声で笑い始めた。

 

「……ふふ、くふふ……二度もババアなどと……仕置きが必要よのぅ? 覚悟は出来ておるのかえ?」

「な、何じゃ!わしは間違った事は言っておらんぞ!? だいたい悪いのはシロネじゃ! だからそのようなーーんむっ!?」


 あくまで強がるクロネ。

 その口上の途中でシロネがクロネを正面から抱きしめて不意打ちで唇を奪った。


「んっ……ぴちゃ……」

「ぁっ……んぁ……ぁ……ぷはぁっ……シロネ、何する……んぁぁ!?」


 顔を背けて身を捩り拘束から抜け出そうとするクロネ。

 シロネはそれを許さず今度は首筋を舐める事に切り替えて、ついでにクロネの尻尾を片手でガシッと掴んだ。


「ひぅ……!?」


 シロネは掌に魔力を滾らせて、クロネの尻尾を魔力を纏った手で擦って刺激する。

 ゆっくりねっとり尻尾の鱗の流れに逆らうように撫でられると不快感のあまりクロネの柔肌にぞわぞわと鳥肌が立つ。


「あぅぅ!?」


 クロネが顔を顰めた所を確認するとシロネは別の種類の刺激を与える。

 今度は鱗の流れに添って優しく撫でる。

 尻尾の付け根の柔らかい部分をグイグイと指圧を掛けて揉みほぐす。

 するとクロネはゾクゾクと脳に下腹部に快感が押し寄せて声が我慢できなくなる。


「シロネぇ……らめぇ……それ、らめなのじゃぁ……」


「くふっ、相も変わらず愛い奴よのぅ」


 クロネは足腰から力が抜けてしまい、倒れないようにシロネの首に腕を回して縋り付く。

 すると満足気に笑うシロネ。

 愛しいクロネが自分から抱き付いてきた。

 そう思うだけで嗜虐心がそそられて、鱗の流れに逆らうようにクロネの尻尾を擦る。


「あぁぁ!? や、やめっ、それ、気持ち悪……のじゃ……!!」


「わらわの言の葉を聞いておらんかったのかえ? 悦楽だけくれてやっても仕置きにならぬわ」


「嫌じゃぁ!離せぇ……!!」


 生理的な嫌悪感を覚えてじたばた暴れるクロネ。

 頃合いと見たシロネは再びクロネの尻尾の付け根の柔らかい部分を指でグッグッと押し込む。


「あひっ!? あっ!んっ!まて!だめ!んぁ……」

「クロネはイイ声で鳴くのぅ。まことわらわの玩具に相応しいわ」

「……だ、誰が……玩具じゃぁ……!」

「くふっ、クロネはわらわのモノよ」


 快感の次は不快感を。

 シロネは尻尾の鱗を逆撫でしてクロネにまたもやキツい刺激を与える。


「ふざけ……あぁぁ!? もぅ、やめてぇ……!!」


 そして今度は快感を。

 尻尾の付け根を力を込めてギュッと抓ると、ビクンッと身体を仰け反らせるクロネ。

 尻尾がピーン!と伸びて軽く痙攣している。


「んんぅぅぅ!? らめ! それらめぇ!」


 快感と不快感を交互に与えられるという一種の拷問のような事をシロネは幾度も続けた。


「ぁ……ふぁぁ……んぅぅ……!!」


 その内クロネは頭の中をぐちゃぐちゃに乱され四肢から完全に力が抜け落ちる。

 荒い呼吸のまま惚けた顔で舌を出して、潤んだ瞳でシロネをみつめるようになるクロネ。


「はぁ……はぁ……もぅ……気持ち悪いの……いやぁ……」


「くふふ、なれば憐れなそなたに選択肢をくれてやるわ」


「せ……ん……たく……しぃ……?」


 息も絶え絶えにクロネはおうむ返しする。

 明らかに意識が朦朧として余裕が無くなっていることが見てとれたシロネは計画通りだと舌舐めずりする。

 クロネの下腹部に優しく手を当てて問い掛ける。


「さあ、選ぶがよい。気持ちよくして欲しいか否か、のぅ?」


「っ……!!」


 クロネは息を呑んだ。

 否と答えた場合は間違いなく快感と不快感を交互に与えられる、あの頭がおかしくなる行為が再び始まる。

 しかし気持ち良くして欲しいと言った場合はそれこそ身体を今まで以上に好き放題される事は確実。

 どちらにしても解放される見込みは無い。

 ならばとクロネは悩みに悩んだ末に、


「気持ち良くして……欲しい……のじゃ……」


 震える声でそう口にした。

 お腹の奥がきゅんきゅんして我慢が出来なかった。

 心が弱りきったクロネの股の間に、愉悦に口の端を歪めるシロネの手が伸びた瞬間ーークロネの身体を眩い光が包み込む。

 目が眩んで直視できないほどの光量だった。


「これはそなたの仕業かや?」

「今度は何をするのじゃ?」


 同じように首を斜めに傾げて、殆んど同時に発せられた疑問の声。

 クロネの顔は嘘をついているようには見えない。

 故にシロネは第三者の仕業だと理解した。

 自分と同じ龍の貴種たるクロネにこのような事が出来る魔法と言えばーー


「よもや……召喚魔法ではあるまいな……!?」


「あっ、魔法防御するの忘れーー」


 喋っている途中で光の奔流に呑み込まれてクロネの姿がフッと消え失せた。

 呆然。シロネは固まったまま動けずクロネが消えた場所をポカンとみつめる。

 その表情がみるみる内に真っ青になり、


「……あ……あ……わらわのクロネが拐われたぁぁぁ!!?」


 数瞬の後、乾いた叫びが荒れ果てた大地に響いた。



亀更新。

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