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怪物は一日にして成らず  作者: ランナー
3章 青春の過ごし方
63/324

62話 文化祭前日祭②

 浅井農業高校との第二試合目が始まった。

 投球練習を終え、哲也のセカンドへのスローイングに避けながらマウンドに置いたロジンバックに指先を触れた。

 第二試合の先発を任された俺を防球ネットの向こうで観戦する友人たちが暖かい声援をしてくれている。 思わず耳を傾け試合へのモチベーションアップに繋げようとする。


 「佐倉ぁ! 打たれろー!」

 「ド変態の佐倉ぁ! とっととマウンドから降りろー!」

 「ってかピッチャー強襲で一度死ね!」


 あぁ、なんて酷い幻聴だ。目を細め空を仰ぐ。俺の友人たちがこんな事を言うはずがない、うん。

 よし決めた。あいつら、あとで覚えとけよ。



 「いっかーい! 元気出してこぉー!!」

 哲也が元気で良く響く声がグラウンドに広がる。

 さて俺に罵声を浴びせた奴らが腰を抜かすほどのピッチングを見せてやろうか。

 女だろうと野郎だろうと、俺のピッチングを見て惚れんなよ。


 左打者の一番バッターが打席へと入る。

 バットを短く持ち打席の奥に立つ。典型的なヒッティングタイプだな。体を露骨に縮こませてストライクゾーンを狭く見せる小細工すらしてくる。だが、その程度で動じるほど柔い男ではない。

 初球のサインはインコースへのストレートか。


 俺は頷きそして一拍の呼吸を置いて、ゆっくりと振りかぶる。

 もう観客からの雑音は聞こえない。視線の先にある哲也のミットを一点に見据え、そこに目掛けて白い矢を放つのみ。


 体全体の動きを一度に確認する。どこも異常は無い。今日も十全なピッチングができそうだ。

 そう判断し、俺は自身の最高のボールを放つために右足が着地する。

 足腰が鋭く回り、左手の中で放たれるのを待っていた矢は、真っ直ぐに哲也のミット目掛けて発射された。


 乾いたミット音がグラウンドに鳴り響く。

 さっきまでギャーギャー喚いていた観客の声援が静まった。


 「……まだ甘い……」

 弱く息を吐いて帽子のつばを左指でつまみながらボソリとつぶやいた。

 未だに直らない。左打者のインコースへのストレートのコースの甘さに俺は思わず苦い表情を浮かべた。

 今のボール、打席に立つバッターは驚いたように顔をギョッとさせているが、全国クラスのバッターなら容赦なく打ち抜いていただろう。

 それでもボールの状態は悪くない。走っていると表現しても差し支えないぐらいには良いボールを投げれたと思う。今日も調子は良い。大丈夫だ。浅井農業高校レベルのバッターならば打たれる事はないだろう。



 「ストライク! バッターアウト! チェンジ!!」

 球審を務める亮輔の右手が高々と天に突き出された。

 三者連続三振。この試合、初回の浅井農業の攻撃の結果だ。

 俺は息を吐きながらマウンドをゆっくりと歩いて降りる。


 観客からの大歓声の中で、俺はゆっくりとした足取りでベンチへと歩いて向かう。


 「英雄、ナイスピッチ!」

 哲也が近付いてきたと思ったら、開口一番にそんな事を言っていた。


 「この調子で、どんどん抑えてこう!」

 なに言ってんだこいつは?


 「バーカ、左打者には徹底的にインコース攻めだよ。佐和ちゃんが今日の試合でわざわざ格下の浅井農業を選んだ理由考えたか? レギュラーに左打者が7人も居るからだろ? ようは俺の左打者へのインコースへのボールが甘くならないようにする実戦練習だろう?」

 「あ、そうか!」

 こいつ、俺よりも学力高いくせにこういう発想が出来ない。

 そう言うところでは俺の方が頭が良いのかもしれない。そんな事を言ったら哲也に呆れられるだろうから言わないけども。


 「次の回も左打者からだろ? 打たれても良いからインコースのサインをバンバン出してくれ」

 「オッケー! 分かった」

 そう哲也はニコッと笑った。



 初回の我が校の攻撃。

 一番耕平君が積極的に行くもセカンドゴロ、二番恭平は追い込まれてからボール球に手を出してショートフライに倒れて早々にツーアウトになってしまう。


 「おかしい……こんなはずでは……」

 今日、とことん打てていない恭平。

 凄い悔しそうにしている。気合入りすぎて打てていないパターンだ。

 ヒットを打とうと意識するあまり、打ち頃のボールが来るまで待っている。それがダメだ。恭平は普段はとんでもないボールでも積極的に打とうとするバッターだ。

 いつも通りやってれば良いのに、こいつという男は……。


 「恭平、いつも通りに行こうぜ!」

 俺が声をかける前に大輔が声をかけた。

 お前はどんな時でもマイペースだよな。それが大輔の良さだし大輔が活躍している秘訣でもあるのだがな。

 どんな場面でも泰然自若の姿勢を崩さない。どこまでもマイペースでやる気がないのでは? と不安になるほどに大輔の感情は常にフラットだ。


 ツーアウトになったが、三番龍ヶ崎がワンボールツーストライクからの4球目を弾き返し、三遊間をライナーで抜いてレフト前に転がるヒットで出塁する。

 そして打者は四番の大輔へと回る。ゆっくりと打席へと向かう大輔を見ながらも、俺はネクストバッターサークル内に腰を下ろした。


 「大輔! がんばって!」

 ふとベンチのそばから三浦の声が聞こえた。

 珍しい。三浦があんな大きな声を出すなんて。

 きっと大輔の耳にも入っているだろう。頑張れよ、大輔……え?


 一塁側ネクストバッターサークルから右打席に入る大輔を見る。

 表情がおかしい。あんな真剣な表情、下手したら初めて見たぞ。やべぇ、心なしかオーラが出ているのを感じる。

 先ほどの大輔の打席での評は否定しないといけないようだ。大輔は彼女に応援されるとありえんぐらいにやる気をみなぎらせる。


 大輔が打席に入って、一球目の出来事だった。

 まるで白球を粉砕する大輔の一撃はまさに暴風の一振りという言葉が一番しっくりと来た。

 金属の爆音がグラウンド全体に響き渡り、騒いでいた観客が一瞬にして静まり返った。

 快音が木霊する中、弾き返された白球は初速からものすごいスピードでセンター方向に、120m先に張られたネットへとぐんぐんと勢いをつけて飛んでいく。

 外野手は一歩目を踏み出したところで追うのを諦め、ただただ茫然と宙を駆け抜ける打球を見つめていた。

 打球はセンター方向あっという間に張られたネットを越え、さらに十数m先の地面へと落ちた。

 その瞬間、ドッと歓声が沸いた。


 大歓声の中で大輔は淡々とダイヤモンドを走る。

 およそ高校生が打っていい打球ではない。恭平のように女に応援されているからと力む事もなく、むしろそれを力にして打ち抜く度胸。

 本当に高校生になってから野球を始めたのかあいつは? 実は俺らに黙って小学生の頃から野球をしていたんじゃないのか?

 もうね、奴は完璧天才だよ。野球をする為に生まれた天才。バッティングが神がかってる。文句つけようがない完璧な一撃だった。

 打撃に関しては奴を越えられる自信が無い。野球経験一年足らずの奴に天才の俺がここまで言う時点で、奴が天才であることは間違いないだろう。マジで高校生になるまで何してたんだよってレベルだ。


 「ナイバーッチ、大輔!」

 「おぅ! お前も続けよ英雄!」

 そう大輔と交わしながら、バトンタッチするように大輔と俺は自分の右手で相手の右手を叩いた。そう、ハイタッチだ。

 お前の打撃に続けられる自信はないけど、頑張ってみせますよ。

 こっちも知り合いの女の子に応援されてるわけですしね。



 俺は大輔と入れ替わりで左打席へと入る。

 相手ピッチャーもあんな馬鹿げた当たりを初球から打たれたら動揺するだろう。

 大輔のような破壊力がない俺はそこを突くしかない。


 大輔に打たれたのはインコースへのストレート。さすがにキャッチャーも二球連続で同じコース、同じ球種は投げれないだろうし、ピッチャーも嫌がるだろう。

 そうなると初球はアウトコースへの変化球。相手の持ち球は見た感じストレートとそこそこ曲がるスライダー、それからあまり曲がらないチェンジアップ。

 耕平君と恭平の打席で決め球はスライダーだった。そうなると初球は……。


 放たれる一球目、予測通りのアウトコースへのチェンジアップ。

 多少ボール気味。だが予測した球を見逃すほど俺は馬鹿じゃない。


 イメージは大輔の一振り。

 暴風のようなスイングでボールを迎え撃つ……!!


 自分の出しうる力で精一杯振りぬく。

 バットに衝撃が走る。だが詰まらせた時の衝撃じゃない。芯で捉えた時のほんのり感じる重みと腕に残る気持ちの良い衝撃。

 快音がヘルメット内に反響し、うるさいほど鼓膜に響く。

 バットを思いっきり振り抜いた。打球はライト方向へと飛んでいく。

 勢いはある。あの勢いならば間違いないだろう。

 そう確信しながらダイヤモンドを走る。もうまもなくライトに飛んだ打球は外野に弧を描くように張られたネットを越した。


 二者連続ホームラン。

 俺も観客の拍手と歓声を聞きながらダイヤモンドを悠々と回る。

 いやあ、ここまで調子が良いと後が怖いぜ。


 ホームベースをゆっくりと踏み、六番の中村っちとハイタッチする。


 「英雄おめぇ、打ちづらくさせやがって!」

 「中村っち頼むぜ!」

 困ったように笑う中村っちに、俺は冗談っぽく笑って、ベンチへと戻る。


 結局、中村っちは空振り三振で終わった。

 ベンチから見ててもめっちゃ力んでいた。ホームランを意識しすぎたな。これには佐和ちゃんも大笑い。

 だが初回から3点。うん上々の立ち上がりだ。さてさて、この後も気合入れてやっていきましょうか。



 野球部がグラウンドで練習試合をしていると聞き、私たちはB組の出し物の準備を一時中断して、グラウンドにやってきた。

 気づけば試合は第二試合に入り、あっという間に六回を迎えていた。

 試合は5対0で山田高校がリードしている。

 英雄は中学の時よりもピッチングフォームが格好良くなった。試合中の表情は相変わらず素敵だった。


 「沙希! 佐倉って投げてると格好良いね!」

 隣で英雄を見ていた友人の理香子ちゃんが、興奮気味にそんな事を言っていた。

 思わず私は作り笑いを浮かべるしかなかった。


 明日には文化祭だと言うのに、今日作業に来た生徒の多くが野球部の試合を観戦していると思う。

 多分、この中で英雄の事を格好よく思えた生徒はたくさんいると思う。


 そうだ、英雄は格好良い。

 投げている時の姿、表情に惚れた女子の数は知れず、おそらく投げている時なら須田君じゃ叶わないくらいの格好良さがあると思う。

 だからこそ余計に不安になってしまう。


 あの鈍感な英雄でも、いつかは誰かを好きになる。

 その相手がこの試合を見たのがきっかけになりそうで怖い。


 まったく中学の頃から私は変わっていない。

 練習試合や公式戦、応援行った球場やグラウンドで、投げている英雄の姿に惚れた子と英雄は付き合ってしまうんじゃないのか? いつもハラハラしていた。


 でも、少しして英雄はいつも馬鹿みたいに笑いながら「やべぇ告白されちまった! っても、付き合う気になれないんだよなぁ」なんて言って、いつも安心する私が居た。


 やはり私は英雄が好きなんだと思う。

 哲也も私の事を応援してくれる。頑張ろう。そう決意を新たにする。


 ここでまた歓声が起きた。

 英雄はこの回も三者連続三振でマウンドを降りたのだ。

 この回までに相手から打たれたヒットは1本のみ。奪三振は既に12を迎えている。

 やはり英雄は凄い。だてに天才と自称しているだけはある。


 「佐倉君……やっぱり格好良いなぁ……」

 ふと隣で誰かが呟いた。「やっぱり」と言う言葉を使っているという事は、英雄を知っている人物。

 一体、誰? 私は隣に立つ女性を見た。

 そこには鵡川さんの姿が。そう言えば英雄に勉強を教えたりしてたし、仲が良いっぽい。

 そんな些細なことに嫉妬しながらも、声をかけていた。



 「あれ? 鵡川さん」



 佐倉君の試合を見ていたら、隣から急に声をかけられて、私はビクッとしてしまった。

 呟いていたのが誰かに聞こえてしまったのかな? でも心の中だけであの言葉を閉じ込めるのは嫌だった。

 私は声をかけられた右隣の女性を見る。

 初めて見る顔だ。いや、何度か学校内で顔は見たことあるけど、話したことは全くない。


 「えっと……どちらさまですか?」

 「あぁそっか、初めまして山口沙希って言います。英雄の話で良く鵡川さんの名前を聞いていたので」

 英雄? なんで佐倉君を下の名前で呼んでるの?

 山口沙希……。あぁ、よく佐倉君とメールしていると彼の話しに出てくる女の子の友達か。

 一度会って話したいと思ってたけど、とても可愛い子だった。

 佐倉君の話ではメスゴリラだとか、熊と一騎打ちして余裕の勝利を収めそうとか言ってたから、もっといかつい感じだと思ってたから、拍子抜けしてしまった。


 「そうなんですか。改めまして鵡川梓です」

 そう私はペコリと山口さんに一礼する。

 山口さんも慌てて頭を下げた。まるでお見合いをしているみたいだ。


 「佐倉君の話でよく聞いてまして、一度は会って話したいと思ってました」

 「そうなんですか。って英雄は、私の事なんて言ってます?」

 「山口さんの事ですか?」

 ……さすがにメスゴリラとかの話題は言わない方が良さそうだな。


 「そうですね、男勝りで口うるさいけど良い奴だって言ってましたよ」

 そう私が伝えると、山口さんは少し照れながらも嬉しそうな顔をした。

 あぁ、この人も佐倉君の事が好きなんだ。今の表情を見てなんとなく察した。


 百合ちゃんも然り、彼女も然り、やはり佐倉君はモテるんだ。


 「鵡川さん、もし良かったら連絡先交換しません? 英雄の愚痴はいつでも聞きますよ」

 「そんな、佐倉君への愚痴なんてありませんよ。佐倉君はとっても優しい人です」

 そう私はほがらかに笑った。

 山口さんは一度驚いた表情を浮かべたが、彼女も嬉しそうな顔をして「ですよね」と言って笑った。


 試合は七回を迎えていた。

 佐倉君、このまま頑張ってほしいな。



 七回の表の相手の攻撃も、俺は確実なピッチングで鎮圧する。

 一人目をサードゴロ、二人目を空振り三振、三人目をファーストフライで抑え、ベンチに戻る。

 見ているか友よ、見ているか女たちよ、これが天才のピッチングだ。


 「おいおい英雄。インコースに甘い球投げないのか?」

 あまりにも好調の俺に、佐和ちゃんがニヤニヤしながら話しかけてくる。


 「相手打線が弱すぎますよ。浅井農業って秋も地区敗退でしょう? 最低でも県ベスト16ぐらいに顔を出す学校じゃないと、実戦練習になりませんね」

 「お前、俺が簡単に練習試合の相手を見つけてくると思うなよぉ! まぁ酒敷商業とか斎京学館なら知り合いが監督だからな。なんとかなるだろう」

 おいおい、広島東商業の時もだけど、佐和ちゃんってどんだけ凄い高校とパイプを持ってるんだよ。

 やはり佐和ちゃんは只者じゃないな。


 「まぁ、今日の試合以降は、県外の学校と戦うと思うけどな」

 「なんでだよ」

 思わず俺は聞いていた。やはり県外の高校って事は、広島東商業とか承徳レベルの名門校になるのかな。


 「このまま行くと、てめぇと大輔が試合前に研究され尽くされそうだからな。これからは極力県内で練習試合はしないようにする」

 などと佐和ちゃんは冷静な表情で言っていた。

 なるほどね。まぁ研究一つされたところで崩れる俺と大輔では無いけどね。

 特に大輔なんか、研究すれば研究するほど絶望に追い込まれるんじゃないか?


 「って事で、残りの八回、九回をパパッと抑えてくれよ。エース様」

 「任せとけ」

 俺は佐和ちゃんへ自信満々の笑みを浮かべながらこぶしをグッと前へと突き出す。

 左打者へのインコースも甘くならなくなったし、後はおいおい修正していけば良いだろう。


 「達也君ファイトぉー!」

 岡倉が打席に入ろうとする龍ヶ崎にエールを送る。


 そう言えば龍ヶ崎と岡倉の件もどうにかしないといけないな。あとボブと恭平の事もあるか。それから哲也と沙希、誉と鵡川と、まだまだ野球以外にも、やる事は山積みだな。

 それでも充実していると実感する。野球も恋愛も学校生活も、どれもこれも納得の出来だ。もしかしたら今が一番楽しいのかもしれないな。



 試合は八回、九回も俺がパーフェクトに抑え、6対0の快勝。

 打線もしっかりと打ち、守備もしっかり守り、文句無しのビクトリーだ。


 しかし佐和ちゃんは些細な失敗も的確に指摘し、アドバイスを送る。

 小さなミスを一つづつ無くしていく。レベルの高い学校同士の戦いになれば、一つのミスが命取りになるからだそうだ。

 甲子園を勝ち上がっていくには、一つのミスも許さない事が大事だと佐和ちゃんは語っていた。



 試合も終わり、グラウンド整備も終わり、観客していた奴らに話しかけられる。


 「佐倉! 俺は最初からやる男だと思ってたぞ!」

 「スゲェな佐倉! さすが俺が見込んだ男だぜ!」

 「お前凄いな! まぁ、俺は最初から凄いと思ってたけどな」

 などと観戦していた友人に言われた。

 知ってるか? こいつら、さっきまで打たれろとか言ってた奴らなんだぜ。言っとくが、その言葉で俺が許す訳無いだろう。あとで覚えとけよ。


 その後女子に囲まれた。かなり囲まれた。須田の気持ちが1割分かった。

 やばい、これが俗にいう「モテ期」ってやつなのか!? 俺にもモテ期の到来したのか!?

 ははは、これが酒池肉林か。これが酒池肉林って奴なんだなぁ!!


 「あの! メアド交換しませんか!?」

 結構可愛い感じの後輩の女子が、そんな事を言ってきた。


 「悪いけど無理。いまは野球に集中したいから」

 神妙な顔一つ浮かべて断る。

 このイケメン発言で、この子をさらに惚れさせてしまうわけだ。我ながら罪な男だとつくづく思うよ。


 まぁ野球に集中したい気持ちは本当だ。真面目に今は野球に集中したい。だけど野球の事で断ったのは6割ぐらいか。

 他4割の内訳は、まず3割が沙希だった。残り1割が鵡川でした。

 なんで沙希と鵡川が出てきたのかは分からない。けれどどちらも仲が良い女友達だ。変に恋愛にかまけて彼女らに愛想つかされるのが嫌だったのかもしれないな。


 ともあれ文化祭前の試合は無事終わった。

 これで心置きなく明日からの文化祭を楽しめそうだ。

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