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「はい、これ」
僕は日高におしるこを渡す。
「ありがと、ってこれまた随分と和風だね」
日高は両手でおしるこを受け取ると、まじまじと缶を見つめていた。
「ねえ弓立、おしるこってなんで『お汁粉』っていうんだろ。知ってる?」
僕はコートを脱いで椅子の背にかけ、コーラを机の上に置いた。
その間も、日高はじっと缶を見つめている。
「おしるこが…えっと何の話?」
「えっと、おしるこってなんで汁の粉って書くのかな、って話。だっておしるこって汁だよ。これは豆と汁じゃない。まめしるだよ」
日高が缶に指を掛けると、ぱかん、という小気味いい音とともに、おしるこの缶が開いた。
その缶の中を、日高はじっと覗き込む。
「うん、汁だ。あとこれお豆入ってないやつだ」
日高がちょっと肩を落とすのを見て、なぜか申し訳ない気分になる。
「日高さ、おしるこ作ったことある?」
「ん?」
日高は覗き込んでいた缶を置く。
缶を開けたのは中を見るためで、飲むためではなかったらしい。
「あるよ、袋に入ったあんこを買ってきて、鍋で温めるやつ」
「もともとお汁粉って、小豆で作った粉を汁に溶かしたものだったらしいよ」
「だからお汁粉?」
「そういうことらしい」
「ふーん」
うんうんと頷くと、日高はおしるこの缶を手に、唇を缶の口につける。
「え、日高」
そして、僕が制止する間もなく、そのまま腕をグイッと持ち上げ、一気に缶を煽った。
ごくごくと喉が鳴り、それに合わせて喉が上下する。
ぷはあ、と大きく息を吐くと、缶を机に荒っぽく置いた。
からんからん、と缶が小さく音を立てる。
日高はかなり思いつきで行動するので、僕を含め周りの人間は毎度毎度びっくりさせられる。
「甘いね、あと熱い」
「そりゃそうでしょ、あったかいの買ってきたんだから」
小さく息をついて、僕も椅子に腰を下ろす。
机に置きっぱなしにしていたコーラを取って、プルタブをつまむ。
プシッ、という音と一緒に、炭酸が噴き出した。
赤いパッケージが特徴のポピュラーなコーラだ。
「あ、コーラだ」
「もしかしてコーラの方がよかった?」
「ううん、私炭酸飲めないし」
炭酸が口の中でシュワシュワとはじける。
冬に飲む冷たいコーラも、悪くないかもしれない。
「ところでなんだけど」
「うん?」
次はなんだろう、コーラの語源とかだろうか。
コーラの語源は日高でも知っていると思ったのだけど。
ちなみにコーラはコーラの実から作られるからコーラという名前だったりする。
「これ、なんだと思う?」
「え?」
予想に反して、日高が口にしたのはコーラの話なんかじゃなく、全く見覚えのない手紙の話だった。
白い封筒に、水色の簡素な便箋。
差出人の名前もなく、宛先もない。
便箋には、ただ一文だけが、小さく綴ってある。
「ごめんなさい、あなたが■■■■■だから、■■■未来をを呪ったのです」




