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「ハッピーエンドの向こうか、うまく想像できないな」

正直なことを言うと、日高が何を言おうとしているのかもよくわからない。

そう僕が答えると、日高は閉じた本を片手に身を乗り出した。

「例えばお話がハッピーエンドで終わるとするでしょ、そしたらさ、その終わった話の先は語られないわけじゃない」

「そりゃそうだ。ハッピーだろうとなんだろうと『エンド』なんだから」

「物語が終わった瞬間、エンドマークのそのときは確かに幸せなのかもしれないけど、そのあとは?一年後は? 十年後は?」

「知らないよそんなの…。それを想像するのは読者の特権なんじゃないの?」

一気にまくしたてる日高に対し、若干おざなりな感じに僕は言葉を濁す。

また日高の悪い病気が始まったなと、心の中で小さく毒づいた。

「かもしれない、というかそうなんだろうけど、更に言うならそんなとこまで考えていないとか、そういうことなんだろうけど。それでも気になるじゃない、主人公とヒロインはこれ以降うまくいったのかな、とか。無事優勝を果たせたチームの後輩の代はどうなるんだろう、とか」

「そういうのを野暮って言うんだよ」

「野暮、うん。そうなんだろうね。でも私は気になるんだよ、だって語られる物語なんて、人生という名の物語の中のごく一部だけで、それぞれの物語にはまだ先があるはずで」

「それは現実に即した話であって、小説の中の話に求めるべきことじゃない。よく言われるだろ? 現実と虚構を一緒にするな、ってさ」

物語がノンフィクションなら、あるいは続きとやらもあるのかもしれないけれど。

日高が言っていることが、そういうことじゃないっていうことは、僕にはよくわかっている。

そして日高自身もそのことは、よくわかっている。

わかっているのに考えてしまうし、口にも出してしまう。

そういう性格なのだ。

そんな日高のことを面倒だと思うけれど、別に嫌いじゃない。

疎ましいとも思うけど、憎くは思わない。

「うん、現実と虚構を一緒にはしていないつもりだよ。虚構に現実を持ち込もうとは、してるのかもしれないけど」

そのあとも日高のおしゃべりが止むことはなく、僕はただ適当に、機会をみて相槌を打つことに専念することにする。

つまるところ、これが僕と日高の関係なのだった。


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