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遥かに続く草原を、爽やかな風が渡っていく。
今にも消えそうな道を辿れば、やがて現れる小さな村。
『最果ての村』エスト。かつてはルーン遺跡へ向かう冒険者達で賑わっていたが、今や訪れる者もほとんどない、寂れた農村だ。
そんな辺境の村へと続く唯一の道を辿る人影に、鳥達が軽やかな声を投げかける。
晴れ渡る空を見上げて目を細めた旅人は、一息入れるために足を止めた。
「やれやれ。こんなに遠いとは……墓参りも楽じゃありませんね」
背負っていた荷物を降ろし、草に埋もれかけた道の先へと目を凝らす。
辛うじて見えるのは鐘つき堂の尖塔と、重厚な神殿の屋根。それ以上高い建物は恐らく存在しないのだろう。聞きしに勝る片田舎だ。
「こんなところまで連中が出張ってくるとも思えませんが……ま、仕事ですからね」
自嘲めいた呟きを掻き消すように、高らかに響き渡る鐘の音。昼飯時を知らせるその音に頬を緩ませて、旅人は再び歩き出した。