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アルデニア冒険譚  作者: 寝る寝る坊主
第一章 ~初まったのはあの日から  始まったのはこの日から~
1/4

プロローグとその前のプロローグ

 青い空。

 白い雲。

 降り注ぐ光が、水平線の先まで照らしている。


 オレは海面にぷかぷか浮かび、頭上の太陽を恨めし気に見上げていた。


 周りには船の残骸が散らばっている。それにしがみついていた船の乗客たちは、次々と海中へ沈み、海水を血の色に染めた。今も一人の男が必死に抗っているが、死ぬのは時間の問題だろう。


 ここは船乗りたちには有名な船の墓場だ。ここ辺りに住んでいるとされる“海の主”。それを見て帰ってきた者はいない。


 なるほど、航海ルートを変えるときに船長があれだけ反対したのも頷ける。全く自分はついてない。  海を見るのが初めてだから浮かれてしまったのもいけなかった。いつ如何なる場所でも油断は禁物


―――――そんなことは、この危険な世界では基本事項だと言うのに。


 と、そこまで考えた時、海が揺れ水の山が出来た。水しぶきの中姿を現わしたのは、大きい大きい海の主。オレはその威容を見上げる。しかし何もしない。慌てる必要は無く、逃げる意味も無い。というか出来ない。なにせ手足が動かないのだから、これは仕方ない。


 ぎょろり、と海の主が目を動かす。その視線の先には無防備なオレ。うん、最初の獲物はオレらしい。不幸中の幸いとはこのことか。オレは出来るだけ強く相手を睨みつけながら、頭の片隅で考える。


――――――どうしてこうなった?――――――





 これは最初の最初、始まりの前の話。俺は地球という星に住むただの一般人だった。毎日は退屈で、輝く未来もなく、俺はだらだらと毎日を浪費していた。


 転機となったのは、ある日の夢。いや、夢を通した神様との邂逅だった。


「神……?」

「ええ。もっとも、人間が信仰しているような神とはちがいますが」

「ええと……」


 真っ暗な空間で目を覚ました俺は、自らを神と名乗る“光”に話しかけられた。そのとき俺はすでに期待していた。よくあるネット小説のように、異世界への転生が出来るのではないか。きっとそうだ、というかそうしろ、してください。俺の心を読んだ神様は、そのことはすぐに肯定してくれた。ただし、事情はだいぶ違うようだ。


「自殺?」

「はい。その世界で重要な役割を持つはずの存在が、自ら命を絶ちました。理由は単純に、生きるのが辛い、というものでした」

「…………」


 なんか重いんですけど……。


「そのせいで、かの世界には大きな混乱と悲劇がうまれたのです。それもただの混乱ではありません。意図的に作られた、世界を壊しかねない混乱。世界を管理する者として、それを見過ごすわけにはいきません」

「それでなぜ俺に?なぜ異世界への転生になるんですか?」

「神としての約定により、私が直接世界を変えることは許されません。そこで、死んだ本人と交渉しました。最大限の恩恵を授け、死ぬ前まで時間を戻すから、死なないでくれと」


 

 しかし交渉は失敗したらしい。その魂は“安らぎの園”、俺達の世界でいう天国へと向かうことだけを望み、旅立ったという。



「無理やり人生を続けさせることも出来ましたが、それでは世界が悪化する可能性があった。故に私は次善の策を講じることにしました」


 それが、別の世界で人生を送りたいと願う人間の魂を持ってくるという方法だった。


「あなたの世界では、異世界への転生を望んでいる魂が何故か多い。故に、我々は今こうしているような方法で、異世界を強く望む魂を利用することがあるのです。あなたが選ばれたのは、単純にあなたに順番が回ってきたからです。さて……」


 ここからが本題だ。


「あなたに行ってもらう世界の名はアルデニア。あなたの期待通り、剣と魔法に溢れた世界です。」


 それはいい。近未来とかも悪くないけど、やっぱり王道はファンタジーだ。


「あなたにはそこで三つの出来事を起こしてもらいます」

「三つの出来事?」

「その三つの大きな出来事があれば、世界の悲劇を回避できます」


 神様からの説明はその後も続いた。曰く、神の都合で利用するお詫びとして、俺はいくつかの恩恵をもらう権利があるのだという。その一つに、記憶を保ったまま転生する権利があるのだとか。


 しかし良いのだろうか?よくある不老不死とか最強の肉体とか手に入れてしまったら、それこそ世界を滅ぼす危険があるような。そう思い、聞いたが、そのことについては俺が気にすることではないという。異世界に行く魂達には、そこで幸せになってもらいたい。だから恩恵を授ける。


「それに、いざという時の保険がありますから」


 保険?と聞いたが、それに対しては何の返答も返ってこなかった。


 ………ふむ。今までの話を考えると、これは美味しい話だ。


 神様が言う三つのクエストをする約束だけで、異世界に行ける。元の人間が自殺したというのはいささか不安だが、もらう恩恵―――いわゆるチート能力があればさほど問題もあるまい。それにギブアンドテイクの契約だし、無償の善意よりは信用出来るとも思う。なのに。


 

 この胸騒ぎはなんなのだろう?



「協力して頂けますね?」


 しかし、いつまでも悩んでいては、せっかくの機会を失うかもしれない。

 例えどんな困難が待っていたとしても、異世界で暮らすほうがいい。少なくとも、今の俺にとっては。


 意を決して神様の提案を了承すると、目の前の“光”が、一層強く輝き出した。そして、

 

「それでは、あなたの人生に祝福を」


 突然、真っ暗だった世界が真っ白に染まる。

 意識を失う直前、神様はまだ何かを言っていたような気がする。


 そう。確かそれは―――――







プロローグ、読んでくださりありがとうございます。

序盤はシリアスですが、もうちょっとゆるくしていきます。

更新は不定期。作者の気分任せです。

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