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季節の移ろい
香月は笑った。
「わしは、自分が生きている限り、その事を追及するまで。では」
一礼をして、脇坂と政春はその席を外れて、代わりに、芳川、佐野がこの席についた。
「何て・・失礼な博士なんやろう・・」
修二が、思っていた事を口に出す。
「あ、いえいえ。そんな事はありませんよ。凄い答えを出してくれましたから」
「えっ?」
一同が顔を見合わせた。
「つまり、血統固定とか、競翔鳩の交配とかはいかに人為的なものであろうが、その血の合致は、やって見なければ分からないと言う事ですよ。*紫竜号誕生は偶然の神のいたずらです。それをいかに説明せよと言われても無理な話ですから。つまり、鳩の羽色によって決定されるものでも無く、親鳩の性質がそのまま子孫に伝達されるものでもありません。ですから、競翔と言うのは奥が深いのです」
*紫竜号については、勿論偶然では無い。竜の冠が作用しているのである。




