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第一章
「ゴト・・」
物音に政春夫妻は飛び起きた。そこには、しくしくと泣く清治が立っていたのである。
「どうした?清治」
「くすん、くすん・・・雷の鳴る日は、おじいが一緒に寝てくれた」
「さあ・・こっちへ早くおいで。寒かろう」
政春と弓子は、しくしく泣く清治を両側から抱くと、間も無く寝息を立てるのだった。
「可哀相に・・私達に甘える事も出来ず、心を閉ざし、今まで遠慮してたのね、こんな小さい子が」
弓子が涙を流しながら、清治の頭を撫でた。
「私達の子だ・・。清治は、私達の子だ」
政春は、その清治の温もりをしっかり感じていた。
「行ってきます」
近所に住む、同じ年の田中礼二と一緒に登校する清治を見送りながら、俵夫婦は微笑んだ。
子鳩を飼って以来、急速に明るくなった清治に、俵夫婦はやっと安心したのだった。