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志村恭介編 古城
「あの先生が、夜中に素っ裸で歩く訳の1つにあるのです、この水晶が」
「ほぅ・・すると、目的があっての散策があったという事・・?」
「そうです。先生がこれを手に入れたのは、ここより僅か一里程の銅山川の支流の小さな沢の淵です。その淵は思ったより深うて、水も冷たい。なかなか、土地の者でも潜れる所ではありません」
「その淵にこの水晶があるんですね?」
「今はもうありません。幾年前かどうかは正確には忘れましたが、台風で大雨の後、すっかり川層も変わって、その場所は埋もれて分かりません。これが恐らく全てでしょう」




