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志村恭介編 古城
「その昔、わしの母親は鉱夫に襲われ自殺しました。わしゃあ、それが悲しゅうて、辛うて、事件には直接の関係がない、むしろ恩人であった筈の脇坂先生を恨みました。母親がしょっちゅう先生のように立派な人になれ言うて居たのが分からなんだのです。その事が、逆に先生を憎む気持ちに摩り替わったかと思うと、恐ろしゅうなります。先生には一生掛かっても償えん事です」
「はい・・その事は、大体の所・・」
志村は、山田と脇坂のプロセス等を求めては居なかった。その言葉が山田村長には、やや性急に聞こえたのであろう、彼はいきなりこう言った。




