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志村恭介編 古城
脇坂の身の上話など、どうでも良い品川は、ぶすっとした表情で聞いていた。
「わしはな、子供の頃より、夜中に素っ裸になって散策する習慣がある」
「はあっ?」
突然何を言い出すのかと、品川がすっとんきょうな声を上げた。常識的で、生真面目この上の無い男にとって、脇坂の言動は品川の規格を遥かに超えている。脇坂は話を続けた。。
「・・そりゃあ、変な習慣じゃ。わしとてその自覚はあるわい。わしの父親と言うのは軍人で厳格な男だった。子供の精神と体を鍛える為と言って、365日深夜の素っ裸の散策は日課だった」
「へえーー・・真冬の凍った夜にもですか」




