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志村恭介編 古城
日に焼けた大柄で恰幅の良い村長をつかまえて、修作君と子ども扱いのように呼ぶとは・・既に博士と面識もあったのか・・それにしても・・・志村と品川はきょとんとしていた。村長の顔には、はっきりと迷惑だと描いてある。
「ま・・誠に申し訳ないのですが、本日の講演は、村の行事の為に取り止めて頂きたく」
「何と!この気まぐれなわしが、せっかく村の為に講演してやろうと言うのにか?」
脇坂は怒ったように言ったが、それほど怒っている顔には志村には見えなかった。むしろ、意地悪い光をその眼に湛えていた。
「はあ・・誠に申し訳御座いませんが、先生のご滞在中には充分な食料は届けさせますので、どうぞ、心ゆくまで。それと・・誠に申し上げにくい事では御座いますが、夜中に・その・・」
苦しそうな表情を浮かべる村長を尻目に、脇坂はもうすたすたと反対側へ歩いていた。2人は呆気に取られながら、脇坂の後をついて行く。




