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志村恭介編 古城
品川の顔は、見る見る上気し、泣きそうな顔になった後、黙ってうなだれた。本当は、苦労して集めた標本を事もなげに捨てられたので、少々カチンと来ていたのだ。脇坂に鋭くその心理を見破られたのである。
「まあ・・それより博士、その理由を教えて下さいよ」
志村が言うと、
「お前達、塒はどこじゃ・・?」
「別子村に一軒屋を借りております」
その志村の返事に、一瞬脇坂の眼には*躊躇したものを感じたが、
「そんなら、そこへ行って話そう。暫くわしもやっかいになる。それと酒はあるんじゃろうな?」
*脇坂が起こした過去の経緯に繋がる




