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志村恭介編 古城
手を出す志村に対して、老人もしわがれた目の奥から懐かしそうな笑みを浮かべて、その手を握り返す。やや、腰は曲がっているが、足腰はしっかりとしていて、品川と殆ど変わらない身長だった。
「おお、あれからもう*7、8年経つかのう。志村君はその時まだ学生であった」
きょとんとしている品川に、志村は老人を紹介した。
「博士、この青年が私の今回の調査を手伝ってくれている助手の品川君です。品川君、この人の名は君も知っているだろう。*脇坂博士だ」
*年から言えば、もう既に70歳後半になるのだろうが、この時志村は脇坂が実年齢より遥かに若く見えるなと思っていた。それを口に出す事は無かったが、脇坂には何かの作用があったのか・・清治は脳裏に疑問を感じていたのである。が、それも当然、一般人である正春・弓子の前で語る事は無かった。




