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季節の移ろい
「それは、問題無いでしょう。清治君がそれこそ、離さないでしょうしね。少し触っても良いですか?」
こんな土鳩に興味も無いだろうに・・俵はそう思いながら、子鳩を捉まえて、浦部に見せた。真剣な表情で、浦部が鳩を触診する。実は、全くこの鳩は競翔とは無関係なのだが、清治が大きくなるまでずっと鳩舎内で飼われる。清治をずっと見守るように、現れた守護役だったのである。しかし、その守護役が何故、どこから、どう言う目的で現れたのかと言う理由は、清治が最後の最後に頂点に到達し、達観するまで判明する事は無かった。だが、どこかで清治に常に付き添う事となる。それは肉体を没してもと言う意味である。
「へえ・・・意外だなあ」
浦部が声を発した。
「何か?」
「土鳩にしては、骨格が割りとしっかりしていて、竜骨が長く、主羽が伸びて、姿勢も凄く良いです。この鳩は競翔鳩の血を引いているのかも知れないなあ」




