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志村恭介編 古城
「では!」
品川が眼を輝かせた。しかし、志村はまだまだと首を振っている。
「考古学は検証の積み重ねだ。その1つ、1つがどう結びついて行くかは分からない。或いは、ここに集落の痕跡があったとして、それは弥生時代、もっと昔の原始時代の名残りなのかも知れないんだから」
志村は1つ1つの事象で小躍りしている品川とは違って、必ずその先を読んでいるような人物であった。常に沈着冷静。その点ではまだまだ品川は青いと言えるのかも知れない。
翌昼過ぎに、志村が突然石鎚山にロープウェイで登ろうと言い出した。その発案に戸惑いながらも、痛む足を擦りながらでは、否とは言えぬ品川であった。




