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志村恭介編 古城
品川は、志村に認められた喜びを素直に表現した。眼を輝かせると、立ち上がる。そんな彼の様子に苦笑しながら志村も立ち上がった。
志村達は、きのこや植物の採集を行った。その最中ふいに品川が聞いた。
「先生!どうしてこの時期を調査に選んだんですか?」
「夏は、蛇が出るじゃないか。それにスズメ蜂もね、私はそう言うのが、苦手なんだよ」
一瞬眼が点になり、硬直したような品川の顔が一気に崩れた。
「ぷ・・あーっはっはっは。はあっはっは。いやあ、参ったなあ、ははは」
品川は完全にこの時、志村に崇拝に近い感情を持った。尊敬する先生が、自分の身近に感じたのと共に、先生との間が一気に埋まった気がした。自然は、まさしく人の心も開放するのかも知れない。




