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志村恭介編 古城
余り夢を語らない現実的な人物かと思っていた品川だが、大自然の中では人が変わったようだ。彼の隠されていた心根の部分なのかな・・志村は感じた。
「南国の四国かと思っていたが、ここらは高地。思った以上の厳しい冬になると思う。どこかで塒を探して、その本拠地より行動せねばならない。雪が降る前に何かの手掛かりを探そう」
二人は場所を決めるべく、二ツ岳、西赤石山、赤星山と、縦断のコースを行ったり、又戻ったりしながら、一端この山歩きを中断した。地元の人々の生活、風土、歴史や民話等も調べて見ようと、赤星山の山小屋で一泊した後、明日からのコースを相談していた。前山だが標高1500メートル近く、ふもとから眺めると、富士山のような稜線のあるなだらかな尾根が見えるこの山が、これ程急峻な山だとは思いもよらなかった事から、地元の人々の山岳に対する畏敬の念の逸話も聞けるのでは?そんな思いがして来た所だった。




