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志村恭介編 古城
数日後、長期の休暇を申し出た志村と品川。その事で学内が大騒ぎになっていた。研究の為と銘打ってはいるものの、その休暇の詳細理由が明記されていないからだ。それも半年間と言う長期の休暇であった。
「どうしてかね?」
学長が志村に聞いた。学長が直接志村に聞くのは、既に彼の存在が学内でも大きい事を意味していた。学長はもう2年も経ずして退官の身である。その為に学内が騒がしい事を百も承知しているが、実際に彼自身の学内での影響力は無に等しい。志村に聞くのは形式上のようだ。学長の名は志茂田英作、初老の細身の紳士だが、学内では『死んだ英作』と陰でばれていて、そんな存在感でしかもはや無かった。




