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志村恭介編 古城
恭介は由利を強く抱きしめた。由利は短く声を上げたが、力を今度は抜いていた。
T大学での次の朝、*志村恭介のライバルと言われる助教授の岸上公安が、いつものような薄ら笑いを浮かべながら、志村の研究室へノックもせずに入って来るのを、研究助手の品川太郎は気に食わなかった。小太りで、いつもそわそわしてして、他人の失敗は最大限大袈裟に怒り、上司に報告する。そのあだ名を公安から取って、コウアンと呼ばれていた。志村と並んで、次期教授の最有力候補だった。品川は少し小柄で実直な人物で、決して上手も言わないが、嘘もつかない志村を信頼し、尊敬している。自分の目指す教授像を志村に見ているのだ。ところで、品川は体に似合わず、声がでかい。




