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志村恭介編 古城
「出ましょう!ここ」
「だって・・コーヒーがまだ・・」
「いいの!そんなの!」
憤慨しながら由利は溜息をついていた。こんな調子では結婚なんて先の話だ・・と、幾らのんびり屋の由利とても、待ちくたびれ気味であった。
近くのホテルに入ると、恭介を強引にシャワー室へ押し込んだ。彼の服を片付けながら、ボストンバックの中から見えている*本のコピーらしい物を由利は取り出した。そこには、朱色で塗られた蛍光ペンの箇所がびっしり細かいメモと共に、注釈が書かれてあった。国文学を専攻した由利にとっても難解な物であったが、幾つもの驚くべき事がその中にあるのを見て、顔面が蒼白になった。
*重要なキーワード




