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志村恭介編 古城
由利と恭介が待ち合わせている駅の1つ手前で、恵二は電車を降りた。恵二に軽く手を振りながら、由利も考えていた。もしかしたら・・今日・・そう考えると、やや急ぎ足で待ち合わせの場所へ向かった。街路樹の銀杏はもうそろそろ色づき始めていた。
「よっ!」
待ち合わせの喫茶店で、軽く手を上げた恭介が由利の前に立つとの同時に、少し高いトーンの声を発する彼女だった。
「恭介、何よ・・その髪、その服・・お風呂に入ってんの?」
周りの者が注目したその視線を気にして、やや頬を紅潮させながら、由利は恭介の腕を引っ張った。




