未知の血統
「ですが、今春における俵鳩舎は圧倒的な速さで、5連勝しているじゃないですか。このコース設定にそうなれば、不利等無いじゃないですか。近隣5地区と合わせても、ダントツなんですから」
「だから、それが君の読みの甘さだと言うんだ。どうしてその優勝鳩が迂回したんだと君は見る?」
「客観的に、僕がそう見て間違い無い事ではないでしょうか?」
「うーーむ・・。もう少し君には考えて見て欲しかったんだが、まあ、しょうが無いだろう。いいかね?どんな優秀な鳩であっても、一羽が単独で400キロ、 500キロのレースに於いて後続を40キロも50キロも引き離して飛翔出来る訳が無い。引き合いに出すが、500キロレースの中部連合会の優勝鳩は実距離 450キロで分速1213・872メートルだ。つまり逆算すれば、この鳩はこの時刻には(地図見せながら)この付近に居た事になる。他の連合会の優勝鳩群もここを通過する。しかし、河原連合会の優勝鳩がそこから分岐点のここを迂回して、それから他の鳩を圧倒的に引き離して、分速を1800メートル台に上げながら戻るとは常識的に考えにくい。つまり実距離540キロにあたる訳だから、この鳩は赤坂峠をこの時間に多少は迂回しながらも戻った。それが大きく迂回した一群との差と見るべきじゃないのか?」




