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未知の血統
「いやあ・・流石は浦部さんだ」
近隣の連合会の会長である、田名部和郎と言う少し頭の毛が薄くなった初老の競翔家が、地区表彰の席上で浦部の肩を叩いた。
「いやあ・・とんでも無いですよ」
浦部が答えた。そして続けて言った。
「地区優勝と言っても、分速856メートル幾らですからこの地区では優勝出来ても、同距離にあたるナショナルレースに於いては総合の56位に過ぎません」
「いやいや、謙遜だよ。浦部さんは研究熱心で、新血統の鳩群が僅か2年での稚内からの帰還。それも5羽参加させて4羽帰還と言う素晴らしい成績じゃないか。確かに全体での総合順位は56位だろうが、この地区での優勝は20年ぶりの事。それだけ素晴らしい事なんだ。素直に評価しとるつもりだよ」




