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未知の血統
「清治君・・どうして、空を見上げているの?」
「うん・・もうすぐ鳩が飛び立ちそうだから見ているの」
「えっ・・!」
山川氏が驚く。それを察して政春が答える。
「あ・・山川さん・・この子・・清治は、感受性が普通の子より強いと言うか、時々こんな予想をするんです」
「・・そうですか・・しかし驚いたなあ。この子がここの風を知っているとは」
「風?」
浦部と政春が声を発すると同時に、今まで静かであった、周囲の木が揺らめいた。同時に選手鳩鳩舎から、一斉に鳩が飛び出した。羽音が響く。きゅるきゅるきゅる。パンパンパン・・力強い羽音だった。瞬く間に鳩群は海辺方向に高く舞い上がって行った。




