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未知の血統
即座に同じ競翔鳩を飼う者同士だ、打ち解けて話が弾む。
聞けば、山川鳩舎は和歌北連合会の中堅で、長距離系を主体とする独自の血統を使翔させているそうで、興味深いのは、強風が年中吹き荒れるこの地で、地理的不利を克服する体型に特徴がある一群であると言う事だ。
政春も、やっと浦部の意図するものが少し分かりかけて来た。自身の連合会は盆地のような狭窄した大地。香月博士によれば地磁気を乱す何かがあると言う事。又盆地特有の気流の複雑な流れがあって、浦部が東神原連合会時代に培って来た旧血統では通用せず、そこで必然な独自に血統を改良しながら現在に至る事、しかし、流石に香月博士はその地理的条件すら一瞬で見抜き、敢えて香月暁号系統の鳩を政春に託した事。その政春も香月暁号系統の頭抜けた資質に驚愕しながらも、敢えて、自身も又血統を導入したい思いもある事・・話は続く。しかし、浦部は突如こう山川氏に話を転じた。




