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未知の血統
「これ・・清治」
政春が言うが、清治は大きな楠木の所をどんどん先に行き、目線の先で右に折れて、2人の眼前から見えなくなった。
「はは・・ひょっとして・・清治君はこの場所を夢に見ていたのかも・・?」
浦部が、少しにこりとしながらそう言った。
「清治の夢に見た場所・・?なら、浦部さんがここへ来られたのは?」
政春が聞くのを制して、浦部が答える。
「まあまあ・・とにかく、山川鳩舎にお邪魔してから」
楠木を右に回った所の、左側にあるやや高台になった石垣の上に、確かに鳩舎が見えていた。10数羽程の鳩が舎外に居るようだが、空を旋回している鳩は居なかった。
「ほう・・なかなか・・大きい鳩舎ですねえ・・」
政春が言うと、浦部も頷いた。




