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羽ばたけ若駒!
政春は笑った。清治も笑った。子犬はしきりに清治にじゃれて甘えていた。
「まあ・・・可愛い子犬」
犬が嫌いなのかと思っていた弓子も、連れて戻って来た「シロ」の頭を撫でた。清治の喜びようから見て、やはり弓子も飼う事に賛成して良かったと思った。そして本当の血の繋がった家族のような生活が始まり、仕事も忙しく順調ではあるが、時折、清治が見せる淋しそうな視線に政春は気づいていた。それは、祖父亀吉の事であろう・・一切その事を口にしない清治だが、何時かは、それは話さねばならない事でもあった。
さて・・競翔に戻るが、薄暗い天候で、3時前から帰舎を待っていた2人の所へ、2羽の鳩が舞い降りた。




