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季節の移ろい
突然の脇坂の来訪に驚きながら、弓子は慌てて食事の支度をする。その弓子の背後から、脇坂が、
「弓子さん、久しぶりじゃのう」
「先生こそ、お元気そうで」
「俵と結婚した頃は、おしとやかな女性に見えたが、年をとったのう、あんたも」
「くす・・相変わらず・・先生もって言っておきましょうか」
その脇坂の毒舌に、弓子はくすっと笑った。清治が奥から顔を覗かせる。
「お・・俵、お前の子か?」
「はい」
「えらい・・まだ小さいが・・これ坊主。名前は何と言うんじゃ?」
脇坂が手招きするが、清治は政春の後に隠れた。
「ん?人見知りをするようじゃのう・・これ、名前はなんと言う?」
「清治」
「せいじか・・うむ。何年生なんじゃ?」
清治が人差指を立てた。




