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季節の移ろい
政春も、今西も黙った。
「それ見い・・わしは文化庁のフリーパスを持って居る。考古学的に貴重なものの発掘許可などは、T大学を通じて後からどうとでもなるわ」
「しかし・・」
政春が言うと、脇坂は、
「ああ、もう気が散ってしょうがない。俵、お前がここに居ると言う事は家が近いんじゃろ、今晩はお前の所に泊まるぞ、ええのう」
そう言って強引に脇坂は、作業を中断して俵家に向かったのだ。
「あ・・あの・・」
今西が声を掛けるが、政春が手で済まないと彼に合図を送った。呆気に取られた今西がそこに立って居た。先日掘った大楠から南側にある、3本の楠木の中心の一本だった。神木では無いが、やはり、無許可で掘れる場所では無い。




