表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人食い森のネネとルル  作者: 月宮永遠
4章:ネネとルルと恋心
46/47

9

 ルルに手を引かれて、人気のない裏庭まで連れてこられた。黄金色のゴールデン・アカシアが視界いっぱいに広がる。

 風が流れて、前を歩くルルの青銀色の長い髪を、ふわりと揺らした。

 深緑に溶け込む青色がすごく綺麗で、恐ろしい魔性のはずなのに、一瞬、ルルは森の精霊なんじゃないかと思ってしまった。


「ルル、どこまで行くの」


 問いには答えず、ルルは緑の中を突き進む。

 淡いピンク色のランブラーローズが絡まる、可愛らしい四阿あずまやまで来ると、ルルはようやく足を止めた。


「ルル?」


「――ネネ、私の本当の名前は、リヴィヤンタンなんだ。ミハイルがネネに話したことは、本当のことなんだ……」


「うん」


 ネネを見ようとしないルルの手を、ぎゅっと握りしめた。不安に揺れる青い瞳が、そっとネネに向けられる。

 強くて恐ろしい闇の魔性なのに。まるでネネを心底恐れているみたいだ。


「だけど、ネネを好きだという気持ちも、本当なんだ。たとえネネに嫌われても、遠くへなんか、行けなかった」


「ルル……」


「ネネと一緒にいたい」


「じゃあ……、一緒にいる?」


 ドキドキしながら問いかけると、ルルは目を見開いて絶句した。


「アタシは、森に帰るけど……。ルルはどうする?」


「一緒に、いてもいいの?」


「いいよ」


「私のこと、許してくれるの?」


 ネネはにっこり笑った。


「山に登ったら、ルルに怒ってたことなんか、忘れちゃったよ。アタシも、ルルがいなくて寂しかった」


「ネネッ!」


 ルルは感極まったようにネネに抱き着いてきた。頬や目元にキスの雨を降らせる。


「ちょ、ちょっと……!」


 頬を撫でられて顔を寄せられると、思わず綺麗な顔を、手で思いっきり押さえつけてしまった。


「――ネネ」


「何するの!」


「キスしたい」


「な、何でっ!?」


「今、そういう流れじゃなかった?」


 ルルの立ち直りの早さについていけない。

 ついさっきまで、しおらしく項垂れていたのに。あれは目の錯覚だったのだろうか。


「調子に乗るなよ!」


「だって、ネネ、すごく可愛いんだもん。さっきからずっと思ってた」


 ルルはネネを見下ろして、しみじみと呟いた。ネネの結い上げた髪を撫でて「とっても可愛い」と甘く微笑む。

 頬がカッと熱くなった。


「うわー、ネネ可愛い! 食べちゃいたい!」


「え……!」


 食べる、と言われて、思わず自分が解体されるところを想像してしまった。


「違うよ、そういう意味じゃないから」


「怖いこと言うなよ!」


「普通は、そう思わないんだけどね……。ネネって誕生日いつ?」


 きょとんとしてしまった。

 生まれた日なんて知らない。物心ついた時には、鎖に繋がれ、奴隷として生きていた。年が明ける度に、一つ歳を重ねていただけだ。


「さぁ……」


「じゃあさ、今日っていうことにしよう。誕生日おめでとう、ネネ! 今日から十六歳だね」


「なんで今日なの?」


「この国の法律では、女の子は十六歳から結婚できるんだよ」


「はー!?」


「私と結婚して、ネネ! そして、ずっと一緒にいて。ミハイルにネネとの婚姻を認めさせよう。ついでに市民権も貰おう……。いつでも気兼ねなく、街に遊びに行けるよ」


「無茶言うなよ!」


 ネネは思いっきりルルを突き飛ばした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=580030222&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ