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着隊の日

 ボクたちはたいようがおやすみしそうなころに、チュートンチについた。ジョーサイをまもるブタイにフニンすれば、すむばしょとガッコウをよういしてくれるってキョーカンどのがいってたけど、ぼろい家とものおきこやしかないよね。どういうこと?


「ホントうんざりね。けど、補助軍の扱いなんてこんなもんだと思うしかないわ。魔女も冒険者もあたしたちのことなんか興味ないし、自分のことは自分で何とかするしかないのよ」


 キァハはのびほうだいの草をふみつけてる。なにかにあきれてるみたい。せっかくの赤毛もながたびでバサバサであらったほーがよさそう。でも、目だけはいたずら好きのネコみたい。


「肝心の司令部が物置小屋を改造しただけって……ま、使えりゃそれでいいけど」


 そだね。セイフクも使えればもんだいないってキョーカンどのもいってた。


「うらにある家のほうがりっぱだね。てまえのはモノオキじゃないの?」

「あのね、だから司令部だって。あたしたちに命令を放り投げるエラぶったヤツが座るところよ。机とか、書類とかが置いてあるの」

「ふーん」


 あのコヤにそんなものがあるのか。

 シンペイくんれんのときのキョーカンどののタテモノのほうがりっぱだったなぁ。


「警衛の兵士もいないし。とりあえず戸を叩いてみればいいのかしらね」


 そういってキァハがドアをたたいた。がんばってたたいたらこわれてしまいそうなくらい古くておどろく。


「はいはい。はいりなさい」


 中からおじいさんの声がきこえたから、ボクたちは「入ります」といってニューシツする。

 モノオキのなかは、おもったよりきれいだ。


「キァハ。すごいよ。みためよりずっときれいだ。だけどすごくせまいね」

「ちょっとあんた黙りなさいよ。司令の御前なんだから」


 ボクはへやにびっくりした。板がむきだしじゃないカベってはじめてみたよ。カベガミってこういうのなんだ。古いけど、本だなとか書るい箱もカベギワにせいりせーとんされてる。

 ランタンのアブラも、いやなにおいがしないあたらしいやつだ。

 なんだかかっこいいトリがかかれたハタもおいてあるよ。

 でも、すごくせまい。やっぱりモノオキをカイゾーしただけなのかな。


「ほほ。珍しいかの。坊主」


 なんだかやさしそうなおじいさんが、りっぱな机のむこうがわにすわってる。


「はい、おじいさん。すごくキレイなおへやでびっくりです!」

「そりゃよかったのう。長旅ごくろうじゃった」

「気をつけ!」


 うわ! キァハのゴーレイだっ!


「敬礼。キァハ・キルル・シャーデンフロイデ下級戦士、同ニック、以上二名はただいまをもって着隊いたしました。なお、同期の失礼をお詫びします」


 キァハがむつかしいシンコクのあいさつをする。こういうときはとにかくゴーレイにしたがってせすじをのばせばいいんだ。


「ご苦労さん。休め」


 ボクたちはうしろで手をくんで、かたはばくらいに足をひらく。


「遠くからよくきたのぅ。それで、早速で悪いんじゃがこの書類を見てくれるかの」


 おじいさんがキァハに一枚の紙をてわたす。キァハはそれに目を通すと、紙をおじいさんにかえしちゃった。どのどうさもテキパキしてたけど、キァハのようすがちょっとヘンになった。


「気をつけ!」


 キァハがゴーレイする。ボクはとにかくフドウのしせいをとる。


「上級戦佐殿、長年の御忠勤、お疲れ様です。敬礼!」


 ボクもケーレイする。で、いったいなにがおきてるのかわからないけど。


「栄誉礼に感謝する。本日付で本官は当職責を辞する。まあ、もう戦のできる年齢じゃないというに、将軍殿のわがままに付き合ってこれまで戦ってきたんじゃ。やっと休めるのう。そうわけじゃて、任務引継ぎをせんといかん。キァハ下級戦士、本日付で戦時任官として貴官を修練尉に任命する。九階級特進じゃが、まあ権限違反ということもない。大丈夫じゃろ」

「拝命いたします。以後、キァハ下級戦士改め、キァハ修練尉は与えられた権限を活用し、職責と義務を全ういたします」

「は?」


 ボクはわけがわからなかったので、おもわずくちにだしてしまった。

 でも、キァハに足のこうをふみつけられたのでだまっておく。いたいなぁ、もう。


「ふむ。そっちの坊主とは違い、お嬢ちゃんは事態を飲み込めておるようじゃの。とりあえず形式的な儀式は終わりじゃ。あとは委細引継ぎに入る。坊主、下がっちょれ」

「ニック下級戦士、わたしの荷物を持って退室し、わたしの居室を整理しておけ」


 とりあえずキァハに言われるままに部屋から引き下がる。

 とびらをゆっくり閉めて、ふうっとひといきつく。

 とりあえず何がなんだか分らないけれど、これからタイへンなことになるのかな。

 でも、とにかくキァハのあたらしいキョシツをそうじしなきゃ。

 とにかく地図をみよう。

 なんだ。このモノオキのうらにある小さな家がキァハのキョシツなのか。

 

 キョシツはモノオキよりもだんぜん住みやすいかんじ。

 ボクにいわせればおやしきだね。

 軍隊はすむところをくれるってきいてたけど、こんなにりっぱなおうちをくれるんだ。すごいなあ。だって、ベッドがあるんだよ? きれいなお皿もあるし、やまづみのマキがチューボーのうらにあるんだ。これならあったかいスープをつくれるし、さむくない夜をむかえられる。こんなところにキァハはすむんだね。

 よし。とにかくボクにできることはそうじだけだから、がんばろう。ほうきはどこにあるのかな。

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