27 王都
二日で二つの伯爵家に関わったが、もう二度と関わるつもりはない。
そう改めて心に決めて歩を進める。
高級住宅街から大分ある距離を歩き、なんとか日没前に街にたどり着くと雨が降り出してきた。
ひとまず適当な宿を見つけ、やっと一息つけたことに安堵感が得られた。
宿に入った途端雨が大降りになる。
改めてあそこをさっさと出てきてよかったと思いながら床についた。
とりあえず今はなにも考えず眠ろう。
雨は轟音になり、一晩中降り続いた。
翌日、雨が止んでいたのですぐに駅に向かう。
行ってみて困り果てた。
土砂崩れがあり、鉄道がストップしていた。復旧の目通しが立たないという。
何日かかるか分からないという駅員の話に、鉄道を諦めて馬車に変えようとするが、距離がありすぎてとても払えそうにない。
伯爵から頂いた手当はあるものの、これに手をつけたら、かなりの痛手だ。
父に渡すお金がなくなってしまう。
困り果てたセシリアはとりあえず近くの店で朝食をとりながらどうしようかぼんやり考えた。
逃げて出てきておいて、助けて、なんていえないし…
ガラス越しの通りには、同じく鉄道が止まって大弱りの者達がたむろしている。
(…さまざまな人がいるんだな…)
貨物列車で荷を運ぶ予定だった者、荷がこなくててんてこまいの者。この店にも仕事前の食事をゆっくり楽しむ者もいれば無理矢理ハラに詰め込もうと慌てている者もいる。
セシリアにはそれらを見ているだけでなんともいえない気持ちになった。
あの小さな町は同じ事の繰り返し。
(……それでいいじゃない。あんな風に困ってしまうこともないんだし、あわてふためくこともないんだし…)
だが、みんな辛そうには見えない。なんだろう、どこかうらやましいのか?
そう考えていた時。
「……え?」
ミルク缶を次々荷台に積んでいく男。店の者や顔見知りに陽気に挨拶を交わし、荷が積み終わった馬車に乗り込む。
「!?」
慌ててセシリアは店を飛び出した。馬車は走り出していた。
(そんな…そんなばかなことって…!)
見間違いではない。たしかにそうだ。
3日だけ夫婦生活をした男、ジーンだった。




