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おいしい気持ち

作者: 灯 結衣

「ただいまー」

玄関のドアを開けると同時に、ふんわりとおいしい香りが鼻腔をくすぐる。

「あ、祥ちゃん!おかえりなさい」

にこにこと笑顔で迎えてくれるのは、つい1ヶ月前に俺の奥さんになった人。

リビングのソファーにスーツの上着を脱ぎ捨てながら、

「今日のメニューは?」

と声をかけるのが日課になっていた。

「今日はね、豆腐ハンバーグにしてみました。最近、体重気にしてるみたいだったから」

対面キッチンの向こう側から、いつも通りの楽しそうな声が返ってくる。

…確かに最近、腹回りに肉が付いてきた気がする。

結婚するまで一人暮らしだった俺には、三食しっかり食事を摂る習慣がなかった。

それがこの1ヶ月、バランスのとれた食事のおかげで、少しずつ、けれど確実に体重は増加していた。

これが幸せ太りっていうものか。

太ってしまうことすら嬉しいと思うなんて、幸せボケしているに違いない。

思わずにやりとしたところを見られた様で、

「なんで笑ってるの?」

と不思議そうに言われてしまった。

「なんでもないよ。ただなんか幸せだと思っただけ」

すごく真面目に言ったのに、

「変な祥ちゃん」

と、やっぱり不思議そうに言われてしまった。


「いただきますっ!」

「いただきます」

食卓に上には、相変わらず今日もセンス良く盛り付けられた料理が並んでいる。

俺の奥さんは、こんなに料理が上手いんだぞ!と、写真を撮ってブログに載せたいくらいだ。

まぁ、ブログなんてやったこと無いんだけど。

今日のメインディッシュは俺の健康を気遣ってくれた豆腐ハンバーグ。

白い大きめの角皿に、小判形のハンバーグが2つ。

その上には和風の香りが漂う餡がかけられている。

この餡には大根おろしが入っている様で食感が新鮮だ。

横には彩りとバランスが考えられた、貝割れ大根とプチトマトのサラダ。

今日も食欲を盛大に刺激する香りとビジュアルで、俺は箸を休める事無く食べる。

「…美味しい?」

結婚して1ヶ月経っても、沙菜は毎回俺にこの言葉をかける。

「美味しいよ!!」

これも、ほとんど毎回俺が言う言葉。

「ありがとう!」

沙菜は本当に嬉しそうに笑ってくれる。

「今日からね、ちょっとダイエットメニューにしてみようと思って。

 祥ちゃんが病気になっちゃったら大変だもんね。

 一緒に健康で長生きしてくれないと」

あ、やばい。

今の発言は反則的に可愛い。

自分の体をこんなにちゃんと考えてくれる人が居るなんてすごいことだよな。

今までこんなに考えてくれた人なんて母親くらいじゃないか?

そう考えたら目の前に居る沙菜がものすごく愛しくなった。

「沙菜、…ありがとうな」

いつもより真剣に伝えたつもりなのに沙菜は

「うん?」

と、あんまり分かっていない様で曖昧な返事をしていた。

まぁ、いいか。

「今日の飯もやっぱり旨いなー!」

「さっきも聞いたよー」

飯が旨いのはもちろんだけど、俺の体を気遣ってくれるその気持ちが本当に嬉しいんだ。

おいしい気持ちを毎日ありがとう。

その気持ちに答えたいから、今日はおかわりは1回にしておこう。




ここまで読んで下さって有難うございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 場面も主人公の心情も充分に描けており、内容をとてもイメージしやすい小説でした。 [気になる点] 物語の起承転結が曖昧で、平坦な文章が続いている気がします。 ありふれた日常の幸せを描かれる場…
2012/01/30 18:41 退会済み
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